偶然からはじまる恋〜羽生結弦 (ページ23)

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彼女2 ページ23

羽生サイド

(羽生)「なんでさきさんがそう思うのか分からないけど、彼女はいないって俺言ってるじゃん。」

そんなつまらない嘘つかないよ。
しかも何、今日のこと全部なかったことにするって。

俺はエレベーターに閉じ込められたことも、妙に居心地が良い所も、不思議なみたらし味も、さきさんの香りも、すぐに思ったことが出ちゃう顔も。

全部全部、もうきっと忘れることなんてできない。
もっとたくさん知りたい、仲良くなりたいと思っているのに。

(羽生)「俺ってそんないい加減なやつに見えるの？
彼女いたらこんな風にさきさんとここに来るわけない。」

世間からはありがたいことに、わりと誠実なイメージを持たれている思っているけど。
さきさんはそうじゃなかったのかな。

正直ちょっと悲しい。
いや、持たれてるイメージの問題じゃない。
全然平気そうに、俺とのことを無かったことにされるのが、すごく悲しい。

さき「いや、ごめんなさい。
そんなことは決してないです…！」

羽生選手が本当にいないと言うなら、信じます。
嫌な気持ちにさせてごめんなさい。
と申し訳なさそうにさきさんに言われる。

あ…。
つい苛立ちをそのまま態度に出してしまった。
怖がらせたかも。

普段は本音を隠して立ち回るのが上手いと自負してる。

その反面、家族やコーチなど気を許してる人の前では、感情をそのままぶつけてしまう。
半分無意識に。

まだ会ったばかりのさきさんだけど、何だかもうずっと前から知り合いのように居心地が良くて…。
苛立ちをそのままぶつけてしまった。

(羽生)「いや、俺こそごめん。言い方キツかったよね。
でも彼女とか本当にいないし、どうしてもさきさんに誤解はしないでほしいんだ。」

さき「いえ、失礼なこと言ってしまったのは私なので、こちらこそすみませんでした。」

向かい合った席のままお互いペコペコ頭を下げあう。

(羽生)さき「…プッハハ！」

側から見たら何してるんだろうって異様な光景だろう自分達の姿を想像して、どちらともなく吹き出す。

あ〜やっぱこの子といると自然な俺でいられるし、すごく楽だ。