偶然からはじまる恋〜羽生結弦 (ページ11)

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彼の正体4 ページ11

さき「やっと出れますね！笑
でも意外とあっという間だったかも…」

気づけばもうすぐで閉じ込められてから30分。
当初の連絡通り、もうすぐ私たちの乗ったエレベーターに整備がやってくるらしい。

(羽生)「うん、思ったより早かったかも。
早く涼しいところに行きたい〜！笑」

お水は飲んでいるものの、相変わらず汗だくの羽生選手。
汗かいてても綺麗だなんて…この人は何をしても絵になるなぁなんて思わず感心する。

そうこうしているうちに、無事に整備の人たちがやってきて
私たちは30分ぶりに外に出ることができた。

(羽生)「まじか〜外もあっつい！笑」

さき「ビル全体が停電しちゃってたんですかね、、」

エレベーターに乗る前は快適だったはずの施設内は、暑そうだと眺めていた外に負けない温度になっていた。

どうやら整備のために使っている機械が熱を発しているらしく、たった30分の停電でもここまで温度が上がってしまったそう。

(羽生)「あの、この後時間ありますか？」

良かったらどこか寄っていかない？
と、汗をハンカチで拭ってる羽生選手に声をかけられる。

さき「…えぇっと…。」

なんの誘いだろう？
なんで誘ってくれたんだろう？

どう答えるか迷う。
まさかのエレベーターに閉じ込められて、まさかの一緒にいた人があの羽生結弦だったなんて。
30分も同じ空間にいて、たくさん話までしてしまった。

十分すぎるくらいの夢のような展開に、頭がついていかない。
気持ちとしてはぜひどこかへご一緒したい。
でも大してファンでもなかった自分が、いいのだろうか。

エレベーターでは不可抗力によって一緒にいたのだから、誰に何を聞かれてもなんとでも説明できる。
けどこの後は？

もしも羽生選手がマスコミに気づかれたら。
もしも私の知り合いに会ってしまったら。
…もしも1人の男性として好きになってしまったら。

きっと今日この日を境にもう会うことはないだろうに、好きにでもなってしまったら後がつらい。
すでに高鳴りっぱなしの胸の音には気づかないふりをして、答える。

さき「ちょっと…暑くてバテてしまって…。
今日は帰って休もうと思います。」

遠回しに断りを入れる。
ただの気まぐれで誘ってくれただけだろうけど。