#34 駆け巡る ページ36
side NK
本当は寝てなんかない。
みんなが話しているのを聞いてた。
嵐ってどんなグループ？
俺ってどんな人？
先生がわかる程度の俺のことは全部聞いた。
嵐のことも調べた。少し。
みんなが早く元に戻って欲しいって思ってるのは知ってるから早く戻りたいんだけど。
脳はなかなか言うことを聞いてくれない。
みんなは足の心配をしてくれたけど、今は普通に歩ける。
先生は、多分脳が足を怪我したことも倒れた時に頭を打ったことも忘れているんじゃないか、って言っていた。
思い出したい気持ちはたくさんあるし、思い出したいけど、
思い出したらまた歩けなくなってみんなを心配させる。頭痛で仕事なんて上手くいかないと思う。
なにより、記憶がなくなってからのことを忘れる可能性が高い、って言われたことがいちばん驚いた。
みんなが俺にいっぱい話してくれたことを忘れたくない。
忘れた方が都合のいいことだってきっと、ある。
あぁ、俺、どうしよう。
時々夢を見る。
でもそれは期待していた、嵐のものではなく、
経験したことがあるようなないような、
記憶の底から湧き出すような景色。
“邪魔、どけ”
“きも”
“またなんかやってる、ダサ(笑)”
いつ、だっけこれ。
“オイ、どの口が言ってんだよ”
“これ以上言ったら許さねぇよ？”
そうやって現れる黒い影。
思い、出せそう……
でも頭が、、
翔「おいニノ！どうしたんだよ！！」
俺の記憶はここで一旦途切れた。
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作者名：珠さと | 作成日時：2024年2月13日 18時
