片恋電車２ *｡◯Sho.S*｡◯

｡◯59話*｡◯ ページ29

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手を広げたまま

早くーって私を催促する翔さんを前に

心臓のバクバクが止まらない私。



い、いいのかな…

でもこんな機会、滅多にないし…



…ええいっ！





翔「…おぉっ(笑)」




半分ヤケクソで翔さんの胸に飛び込むと

ちょっとビックリした様子の声が降ってくる。



さっきは少しだった翔さんの香りに全身包まれて

あぁ、この香り好きだなぁって思う。



ドキドキして苦しいはずなのに、とっても安心。

変な感じ。



翔さんの右手が私の背中に回り

左手でよしよしって頭を撫でられる。



…翔さんに頭を撫でられるのは好きなんだけど

よくされるのは何故だろう？

子供扱いされてるのかな？





翔「…今日何時に帰る？」

A「うーん…7時とか」

翔「え、早くない？もうちょいいなよ」

A「でも、仕事に備えて早く寝て欲しいです」

翔「…確かに、Aちゃんと飲むとついつい話過ぎるからなぁ。しかも…」





そこまで言いかけて、止まったから

少し離れて翔さんの顔を見ると



目があって

ふって笑われて

また抱き寄せられる。





翔「…俺、いつかAさんに酷いことしそー」

A「酷いこと？」

翔「まーそれはおいといて。次ご飯いけるのいつかな〜」

A「翔さんのお仕事終わったら、是非」

翔「ん、頑張るわ。俺がいない間さ…」





また、途中まで言いかけてやめてしまう翔さん。

どうしたんだろうって思ったけど

頭をまた、ポンポンッてされて




翔「…やっぱ、何でもない」




って、それだけ。



何を言おうとしたのかな。

気になったけど詮索するのも何だし

はいとだけ返事をした。



それから、翔さんの落ち着く腕の中で

時間まで暫くそうしていて。



…後から考えたら、ずっと抱き締められていたって

凄いことだけど。



帰りは、いいですって断ったんだけど

結局車で家まで送っていただいてしまった。





翔「とうちゃーく」

A「ありがとうございました」

翔「ん。俺こそ、今日は急だったのにありがとね」

A「いえ。お仕事頑張って下さい」

翔「ありがと。…最後に」

A「え？…んっ」





一瞬で翔さんの顔が近づいて

気づいた時には、唇に柔らかい感触。



数秒触れ合っていた唇がゆっくり離れると

ぱっちり二重の目と、近距離で視線がぶつかる。





翔「じゃ」

A「…はい//」






こうして、暫く会えなくなる翔さんは

またひとつ、痕跡を残していった。

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