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。◯32話*。◯ ページ2

.






…この話には、

ちょっとだけ続きがある。





『すみません、本当にありがとうございました…!』





そう頭を下げながら

次の駅で親子が電車を降りていった後のこと。





『…』





あちゃー…といった顔で

自分の制服を見つめる彼。




もう一枚持っていると言っていたけど

それ以上、何かで拭こうとしていなかったから

持っていたタオルは、男の子に渡したものだけだったんだと思った。







A『(…どうしよう)』





一方の私はひとり、ドキドキしていた。




その日、私はたまたまタオルを持ち合わせていて。

渡そうか、とても悩んでいたから。




何度も、話しかけて

言葉を交わす光景を想像したけど

私はとっても根性なしで、それが決して叶うことはなかった。




話しかけて


何だこいつ


って思われたら、どうしよう。


迷惑かもしれない。





そんな考えが巡って、いつも行動できなかったけど

この時の彼は、困っていたし




何より、この日は最後の登校日で

次の日からは春休みだったから、暫く会えなくなるタイミングだった。





ずっと好きだった人が、困っている。





だから私は、





A『あっ…あの!』





人生最大の勇気を振り絞って





『…え?』





彼に、話しかけた。







ずっと聞きたかった、彼の声。




自分から話しかけたくせに、顔を見れなくて

全身が心臓になったみたいに、脈がうるさくて



ずっと下を見たまま、タオルを差し出す。






____…新嵐〜、新嵐駅です。

A『こ…これ、よければ使って下さい…!』

『え……いいの?』

A『はい。……では』

『え?ちょっ、待っ…!』





恥ずかしすぎて

渡すことで精一杯で。

その場から早く逃げ出したくて。




彼がタオルを受け取ったのを確認して

ちょうど開いたドアから飛び降りた。




後ろから聞こえた彼の声が

閉まったドアによってかき消されて。






ブォーーーーーッ……






彼を乗せた電車は

私を置いて、そのまま走り出した。






A『…いっちゃった』





本当に、一連の出来事は

私にとっては一瞬だった。





降りたこともない駅で1人、その電車を見送って。




まだ治らない心臓の音を確かに感じながら

次の電車に揺られて、ゆっくりと登校した。






それから





春休みが明けて




新学期になった電車の中には






.






貴方の姿は





もう





なかった。

。◯33話*。◯→←。◯31話*。◯



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作品ジャンル:恋愛
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爽歌。(プロフ) - 菜美恵さん» こんにちは!菜美恵さんいつもありがとうございます(*^_^*)誰だって恋愛で傷つきたくないですよね…(ノД`)ありがとうございます!いってらっしゃい☆ (2017年9月8日 10時) (レス) id: 89386c8c46 (このIDを非表示/違反報告)
菜美恵(プロフ) - こんにちは。言えない気持ち、分かる気がするなと思っています。傷つきたくないのかなあと。次の章も楽しみにしています。最初から、読み直してきます! (2017年9月7日 15時) (レス) id: a657482879 (このIDを非表示/違反報告)
爽歌。(プロフ) - 菜美恵さん» こんばんは(*^^*)嬉しいお言葉、ありがとうございます…!!もどかしさ、これからも出せていけたらいいなぁ…頑張りますね∠( ˙-˙ )/! (2017年9月6日 23時) (レス) id: 89386c8c46 (このIDを非表示/違反報告)
爽歌。(プロフ) - 美咲さん» 美咲さん初めまして!一気読み…っ!!嬉しいですっ!!( ;∀;)ほのぼの目指してるので、とても嬉しいです!更新頑張りますね(*^^*) (2017年9月6日 23時) (レス) id: 89386c8c46 (このIDを非表示/違反報告)
爽歌。(プロフ) - keiさん» こんばんは!いつもありがとうございますヽ(;▽;)ノ早く付き合っちまえよ!とツッコミを入れたくなりますよねぇ(^ν^)ムフフ…焦ったいのはまだまだ続きますので、覚悟して下さい(笑) (2017年9月6日 23時) (レス) id: 89386c8c46 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:爽歌。 | 作成日時:2017年8月22日 8時

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