1話 ウヌside ページ2
少しだけだから大丈夫だと思っていた。
俺は軽食を買うために、深く帽子を被り、眼鏡を装着して事務所の近くのコンビニへと向かっていた。
何を買おうかな、なんて呑気に考えていたのが悪かったのか、前から走ってきている人とぶつかってしまう。
結構な勢いでぶつかってしまい、ポンと眼鏡が宙を舞う。
反射的に相手を支えると同時に、俺の眼鏡は相手の方が空中でキャッチしてくれていたみたいで目の前に差し出された。
凄い反射神経だな、と思い視線を下げると息を荒らげて目を大きく見開いた女性。
まずい、と直感的に思った。
きっとAROHAだ。
俺が事務所を出てくるのを待ってた?
もしかしてサセン?
マスクもしてくれば良かった。
何て色々考えて動けないでいる俺に彼女が口を開いた。
「ぶつかっておいて申し訳ないんですけど早く受けとってくれないです!?」
……え?
「……チッ、ああもう!!」
なおも動かない俺に痺れを切らせた彼女が俺の手に乱暴に眼鏡を置いて立ち去ろうとしたけど、それは叶わなかった。
「いった!?は!?なに!?」
俺の服のボタンと彼女の長い髪が絡まっていたのだ。
「あ、すみません、すぐに、」
慌てて解こうとすると、ぐっと彼女が近寄り、
ジョキッ
という音と共に離れていった。
不揃いになった髪を気にする訳でもなく、彼女は気まずそうに俺のボタンに絡まっている髪を見つめている。
「気分を悪くさせてすみません。急いでるのでそれの処理だけお願いします、失礼します!」
「え、ぁ、ちょっと待って!」
そんな呼び止める声も聞いていないのか、走り去ってしまう。
初めての反応と情報量の多さに唖然としつつも下を向けば綺麗な長髪が。
そっと掬って鼻に近づけるとほのかにミルクティーの良い香りがした………って何やってんだ!!!
パチンと自分の頬をビンタした後に彼女を思い出す。
俺の事知らないのかな。
何であんなに急いでたんだろ。
名前知りたいな。
顔見てかっこいいとか思わなかったのか。
なんて色々考えてしまう。
理由はない。
特にないんだけど、ただ、また会いたいと思ってしまった。
その後コンビニに行く気も失せて事務所に戻ったら、髪の毛が着いてる服を見たMJヒョンが腰を抜かしてた。
ウケる。
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作者名:飴んぼ | 作成日時:2022年11月22日 1時