特別扱い【東堂尽八】

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私は彼に指を指してと頼んだことなんてない。
…いや、中学生の時に一度だけ、言ってみたことあったかも。あれ、一度だったかな。




＿＿＿『ねえ尽八、いつも女の子たちにやってるやつ、私にやってみてよ。」


東『あれか？A1人を特別扱いするのは気になるが…幼馴染の特権だ。ほら。』


『…きゃー。』


東『おい！棒読みすぎるだろ全く！』







…3年前の夏休みだったっけ。これは。





さっきまで一緒にいたはずの新開くんも部室から出てくれば更に黄色い声が飛ぶ。
知ってたことだけど、彼にもファンは多くいる。



箱学の自転車競技部は強豪だからか練習を見てる生徒も多い。
入るわけじゃ無く、彼らを見たくて見てる人たちばかり。




私だって、立ち止まって見ればいいのに。変な理屈を立てて見ないのは本当に意地だと思うし、可愛くない。





「…尽八。」





変わった彼を見切れずに耐えかねたのは私だ。あの日、私が告げたあの言葉を聞いた彼の瞳がゆらゆら揺れながら大きく見開いたのを今でも覚えてる。



私、子供だったね。もっと広い心を持っていれば今頃前みたいに仲良く出来たのかな。





降格してしまった私の存在は、昇ることなく宙に浮きっぱなしだ。





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