鍵の在処は内緒のままで ページ14
｢Aさん、コーヒーお代わり飲みます？｣
向かいに座る彼が、空になったグラスに手を伸ばす。
｢あ、うん。お願い。｣
私がそう口にすることなんてわかっていたかのように、彼はそのグラスを手にとって、物音も立てず、ゆったりと立ちあがった。
ふわり、纏う空気に、私はまだ翻弄されっぱなしだ。
二宮和也。
彼が私の部下になって、もう1年になる。
ーーーーーそして。彼が私の恋人になって、もう半年が過ぎていた。
・
大学時代からバイトしていた設計事務所。
働きを買ってくれた社長が、就職活動中の私に｢よかったらうちで働いてみないか｣と声をかけてくれて。
二つ返事で｢お願いします｣と返事をした大学四年の春。
それから数年は下っ端としてがむしゃらに仕事に打ち込んできた。
恋なんて社会に出てから一度もしていなかった。
それくらい、仕事がすべてで。
そんな毎日が当たり前で。
これからもずっと、そんな風に毎日が過ぎていくのかな、なんて思うことが増えていた、一年前の春。
ーーーーー転機というのは、本当に急にやってくるんだ。
・
・
・
真新しいスーツに身を包んだ彼は、｢よろしくお願いいたします。｣と、笑った。
彼と同期入社の社員は数人いて。
その誰もがフレッシュさと共にどこか焦りような空気を醸していたのに、
彼には、そのどちらも感じられなかった。
新入社員のはずなのに『全然可愛げがない』
第一印象は、それだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 772人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
梨沙(プロフ) - 夏の終わりとともに、みなさんを送り出すことができることは、秋を迎える気分ととても似ているなぁと思います。どうかみなさんそれぞれの行く先で幸せでありますように！そう願っています。ありがとうございました。 (2016年8月31日 22時) (
レス) id: e385bf4ae4 (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - とにかく幸せになりました。涙なんかも出ちゃって。大好きな作者様方のコラボ、ホントに大輪の華でした。いろ様とゆうき様はこちらは卒業されるのですよね。本当に素敵なお話をありがとうございます。本音はもっと読みたいです。でも本当にありがとうございました！ (2016年8月26日 16時) (レス) id: 4c513d08fd (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 夏の特大な花火、二宮くんとの会話、ほんとに最高でした！！大好きな二宮作者様の、皆さん、本当にありがとうございます！私も頑張って書こうと思います(笑)本当に本当にありがとうございます！！ (2016年8月24日 11時) (レス) id: bf49cd689d (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - いろさん、ゆうきさん！新しい場所でも必ず見つけます！！そのときはまた、たくさんお話できたらと思います！あらしおりさん！またこれからもよろしくお願いします！たくさんお話できたらいいなと思います！ (2016年8月24日 11時) (レス) id: bf49cd689d (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - あらしおりさん、いろさん、ゆうきさん！お疲れ様でした！！夏色ファンタジア、今まで読んだことのない設定で楽しめたのでよかったです！！、御三方と、ほんとに大好きです。 (2016年8月24日 11時) (レス) id: bf49cd689d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
