No.29 ページ29
【MASAKI】
祐介くんが元気になって、義足も上手に操れるようになると、風間はようやく明るさを取り戻し始めた。
だけど、再び悲劇が風間と祐介くんを襲う。
…交通事故。
風間が大学4年、祐介くんが高校1年、俺が獣医学部5年の、冬の寒い日だった。
風間とはもちろん大学が違ってたけど普通に交流はあって、もちろん祐介くんともその時はもう友達だった。
午後6時33分。
…大きな交差点に、1台の乗用車が猛スピードで突っ込んだ。
こんな時間の、飲酒運転だった。
夕方で通行人の多かった交差点は被害が大きくて、死者が6人、怪我人は40人近くまで昇った。
祐介くんはそれに巻き込まれて、直ぐに病院に搬送されたけど…。
3日で、息を引き取った。
奇跡的に一瞬だけ意識が戻った時、祐介くんが呟いたのは『お兄ちゃん、ありがとう』の一言で。
高校生になってから、最初で最後の『お兄ちゃん』だった。
…風間は、その目の前で彼を看取った。
祐介くんの最期までは…って、最期の最期まで、祐介くんのお兄ちゃんで居続けた。
大好きな弟の頭を、最期まで優しく撫でてあげてた。
…だからかな。
葬儀の時の祐介くんの最期の顔は、とっても安らかで、安心しているように見えた気がする。
…でも、それからの風間は抜け殻みたいだった。
なんにも1人ですることが出来なくなったんだ。
ご飯を食べることも、トイレも、寝ることも、話したり聞いたりすることも…。
自分からすることなんて1度もなくて、何にも興味を示さない。
ずっとベッドの上で独り言を言っているだけだった。
精神的に追い詰められた風間は、一時期は重病の精神病患者の病棟にまで入れられた。
…『死にたい』って、暴れるから。
今はもうだいぶ良くなってコントロールがきくようになった風間だけど、完璧に癒えたわけじゃない。
一時的に傷が塞がってるだけで、いつまた壊れてしまうかなんて分からないんだ。
今みたいにフラッシュバックを起こして引きずり込まれそうになることだって何度もあった。
俺は、風間が沈み切ってしまう前に手を掴んでやらないといけない。
ちゃんと掴んで、引っ張りあげてやらないといけない。
それが、俺の役目だと思ってる。
側にいてあげられる奴は、俺しかいないんだから。
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智宮SK(プロフ) - (名前)ゆぃ@あらしっくす←さん» コメントありがとうございます！そう言って頂けて、嬉しい限りです。色々な試練もありますが、暖かく乗り越えていけるようなそうな作品にしていきたいと考えております。これからもどうぞよろしくお願いします！ (2019年1月20日 15時) (
レス) id: 5c0a0b0fa2 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)ゆぃ@あらしっくす←(プロフ) - 智宮SKさん、いつも更新楽しみにしています！設定も内容もものすごく良くて、本編の方もこちらの方も大好きです。語彙力低くてすみません(笑)これからも更新楽しみにしています！陰ながら応援しています。 (2019年1月20日 0時) (レス) id: 8d153c8151 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くろしば | 作成日時：2019年1月6日 1時
