9步 ページ10
放課後にもう一度機会を伺うしかないな、なんて悩んでいたら昼休み終わりにそれを見つけた。
いつもは阿部くんを盗み見しながら教室でお昼を食べるのだけれど、今日は翔太に連れられて中庭でお昼を食べた。
食べている間も頭の中は阿部くんのことばかり。
阿部くんは少しでも私の事考えてくれてる?
お友達になったらあの鋭い目が柔らかい雰囲気を纏って見つめてくれるのかな。
あの唇が自ら開いて楽しく会話をしてくれるようになるのかな。
そう考えれば考えるほど朝の出来事が悔しくて。
翔太に話しかけられていることにも気付けないくらいぐるぐると考え込んでしまった。
「全然話聞いてないだろ、だる。もう俺行くわ」
なんて、誘ってくれた翔太が不機嫌そうに去っていく。
ごめん。の一言すら口から出てこなくて、そんな自分にため息がこぼれる。
お昼を食べ終わり、1人教室に戻る。翔太はまだ帰ってきていないようだった。
席に着く時にふと目を落とすと、白く丁寧に折られた紙が引き出しから顔を出していることに気付く。
「な、に…これ……」
少しの期待と不安。
ゆっくりと手を伸ばし、引き出しから取り出す。
そのままそっと紙を広げれば、これまた丁寧な文字で書かれた言葉たち。
.
"放課後、校門で待っています。 阿部"
.
、
、はっ。
読んで声を上げなかった私を褒めて欲しい。
まさか阿部くんから持ちかけてくるなんて。
そっと阿部くんの席を見れば、
ばちり、
と眼鏡の奥にある彼の瞳と視線が交わる。
目が合った瞬間すぐに視線を逸らされてしまったけれど、それでこの紙が夢なんかじゃないことが分かる。
じわ〜っと身体が熱くなるような感覚に眩暈をしながら、もう一度紙に視線を落とす。
阿部、と書かれた文字をなぞると朝の阿部くんが脳裏によぎる。
不安そうに揺れた瞳のなかに宿る欲のようななにか。
ゾクッとした。阿部くんの色んな表情をもっと、もっと、もっと。
深い思考に陥りそうになってハッとする。
もうすぐ昼休みが終わる。
放課後までの時間にもどかしさを覚えながら、阿部くんから初めていただいた手紙を大事に大事にしまった。
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keito(プロフ) - すごく面白いです!続き楽しみにしてます! (3月28日 16時) (レス) id: 78b1bd7804 (このIDを非表示/違反報告)
natu_kook(プロフ) - めちゃくちゃ設定好きです!今は可愛い阿部ちゃんが今後どうなっていくのか楽しみです! (2021年11月10日 8時) (レス) @page4 id: bf2fd5e993 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて非常に嬉しいです。マイペースに更新していきますので、今後もお付き合い頂けますと幸いです! (2021年11月3日 0時) (レス) id: ae343693db (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 最新話読みました!想像してとてもかわいくて悶ました!今後どうなっていくのか楽しみです☻ (2021年11月2日 20時) (レス) @page5 id: 22fe685296 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すずめ | 作成日時:2021年11月1日 0時