狼に衣【緑】

3歩 ページ4

放課後。

下駄箱へ向かう阿部くんの後を追いかける。

後ろで翔太がなにか言っている気がしたけれど、それどころではない。

一世一代の大勝負のときだ。

下駄箱で靴を取り出す阿部くんに悟られないよう少し距離を置いて深呼吸をしたのち、覚悟を決めてゆっくりと近付く。




「……阿部くん！！」




緊張によるものか予定より大きな声が出てしまった。

ビクッと体を震わせ、こちらを振り向く阿部くん。

「ば、ばいばい！また明日！！」

逃げられる前に言いたいことを言い切った。

あとは阿部くんの反応を見るだけ。

「…………」

無言でこちらを見つめ続ける阿部くん。






目見開いてる。おめめ零れ落ちちゃいそう。可愛い。






無言で見つめ合う私たち。

酷く長く感じたけれど、きっと実際は数秒あるかないかくらい。

阿部くんの口が開く。





「あ、えと……また明日…………」





聞き取れるギリギリの声量でそう言うと早足で校門へと向かう阿部くん。








返してくれた。








阿部くんと会話しちゃった！！








幸せで溶けちゃいそう。








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