▼その声で聞かせて ページ17
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黒尾 Side. ―――――
そして現在に至る訳なんだけど。
今回ばかりは俺も本当に余裕が無い。
多分、というかきっと
此処にいる奴らは、みんなAが好きだ。
中でも赤葦
あいつはAの幼馴染だ
後輩だけど、もの凄くしっかりしていて
真面目で優しく、周りからの信頼も厚い。
俺からしても、頼れる奴だ。
そんな中、ヨーヨー掬いでも先を越され
２人の奇跡のような出来事に
やっぱり運も味方はしてくれねーのかと
心では深いため息が出る。
察しの良い赤葦は
きっともう気付いてんだろーな。
でも、それなら尚更譲る気なんて無ぇよ。
月島「ねぇ黒尾さん、
ボクいっぱい魚をとる黒尾さんが見たいなぁ。」
木兎「てつろーくん!!俺これ！
このでかくて強そうなやつ!!」
赤葦「..じゃあ俺は出目金で。」
３人が無茶なリクエストばかりしてくる中
少しそわそわしたようにこっちを見てくるA。
何となくわかる。
いつでも自分のことより、他人を優先する優しいAは
普段あんまり自分の意見を言わない。
でも、だからこそ聞きたくなる。
そんな俺は、わかっていながら
A「..く、くろ「A。」」
その綺麗で、か細い声に
自分の声を重ねた。
黒尾「あー･･わり、なんか言うとこだったか？」
A「..いえ、えっと。」
黒尾「ん？なーに？」
聞きたい。
Aの声、Aの言葉で。
A「..小さいの。」
頬を染めながら
Aが口を開く。
A「この小さい金魚が..いいです。」
視線を落としながら、Aは俺に言った。
あーあ。
顔、真っ赤。本当に可愛いのな。
黒尾「ん、任せとけ。」
余裕な笑顔作って答えたつもりだけど、
やっぱり全然余裕なんてねーわ。
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作者名：R. | 作成日時：2016年7月12日 14時
