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牛沢さんにちゅうしてみた ページ3

背伸びをして彼の前に立つと牛沢さんは小さく笑ってなんだと問う。キスしたいと答えると彼はそうと言ってそっぽを向いてしまうから私はなんでもないと言って笑う。
柔らかく笑って私の頭を撫でる牛沢さんが大好きだ。
東京の真ん中で愛を叫んだっていいんだぜ、なんて馬鹿な事を考えながら1歩牛沢さんに近寄る。

「どうした?」
「…なんでもないよ」
「そう?…、っ」
「ふふ、奪っちゃった」

 ただキスがしたくて背伸びをして彼の唇に触れる。驚いた顔をした牛沢さんは可愛い。
牛沢さんの驚いた顔を見るのは初めてかもしれない。
嬉しくてにやける頬を隠して彼に背を向ければ背中に牛沢さんの声がかかる。
正直、自分からしたけれど恥ずかしい。頬が熱いのが、冷たい風のおかげでよく分かる。
背中にかかる声に振り向きもせず答えると彼はそれが気に食わなかったのか、私の腕を掴んで引いた。傾く身体を立て直す事も出来ないまま彼の腕の中に閉じ込められる。恥ずかしい、人が見てるのに!

「う、牛沢さん、恥ずかしい!」
「あんな大胆なことしたくせに?」
「だって、マミちゃんがこうしたら良いよって、」
「へぇ、マミちゃんが。まぁ確かにマミちゃんの言う通りだな。俺今すげぇ嬉しいよ」
「本当に…、?」
「うん、ホント。でも背中向けんのは良くねぇよ。顔見えねぇし。」
「今顔赤いから嫌です」
「嫌じゃねぇよ。こっち向いて、じゃないと俺もキスすんぞ」

 促されるままに牛沢さんの方を向くと確かに嬉しそうに笑った牛沢さんが私を見つめていた。
よく出来ました、なんて言って牛沢さんは私の額に口付けを落とす。キスしない約束なのに!なんて声を上げれば額にはしないと言ってない、なんて。
屁理屈極まりない。なんたる横暴!でもそんな牛沢さんもやっぱり大好きなのだ。
赤くなる頬は手に取るように分かるし、恥ずかしいったらありゃしない。
マミちゃんの言うことはもう聞かないでおこう。

「今なに考えてんの?」
「恥ずかしい、って、」
「俺が何考えてるか分かる?」
「分かんない、なに?」
「連れて帰りてぇなーって」
「馬鹿じゃないの!」

 真っ赤に染まっているだろう顔もそのままに言えば牛沢さんはニヒルに笑んで繋いだ手を握り込んだ。まるで逃がす訳ねぇだろ、と言わんばかりに。
恥ずかしいけど、牛沢さんなら良いかなって思ったり……なんでもない!ニヤニヤしないで!

執筆 18.03.27

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作者名:小夜子 | 作成日時:2018年3月22日 2時

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