わいわいさんと日常の一コマ ページ2
よく晴れた冬の日のことだ。
冷え性の私はストーブをつけて暖を取っていた。晴れとはいえ、まだまだ寒い。
シングルサイズのベッドの上には大きな体の男が一人、くうくう眠っている。
この上で私も寝ていたのかと思うと感慨深い。二人で眠るには狭すぎる。
現に、彼は片足が掛け布団からはみ出している。
けれど、そうでなければ寝るところがないのだから、仕方がないといえば仕方がないのだろう。
すうすう寝息を立てている彼を起こさないようにそっとベッドから抜け出した。
黒いマグカップを手に取る。隣の白いマグカップは、先ほど話した彼のものである。
ポットに水を注いで静かにセットしてから、湯が沸くまでにコーヒーを用意する。
ドリップしたものでなければ飲めないだなんて、どんな高級志向だ。
砂糖と牛乳を用意している間にカチリと軽快な音がして湯が沸いたことを知らせるポット。
傾けてカップに注ぐとコポコポ音を立てながらお湯が注がれていく。
黒いマグカップに、黒い液体。真っ黒で何もわかったものじゃないな、なんて思いながらせっせと砂糖と牛乳を注いで混ぜ合わせた。茶色いそれはひどく私の鼻腔を刺激する。いい香り。
ふうふうと息を吹きかけながら部屋に戻れば、彼はまだ眠っていた。大きな体で寝返りを打ったからか、はたまた寝相のせいか、布団がめくれてしまっていた。(おそらく後者である)
寒いのか、大きな体を丸めて眠る彼が可愛くて頬が緩む。
かけ直してやればその温もりに彼の表情も和らぐ。まるで子供のようだ。
深い眠りにつき直した彼を横目にテレビをつけて音量を下げる。
ちらりとみた現在の時刻、8時57分。平日よりは良く眠れたので良しとする。
せっかくのお休みだからもう少し寝たかったという気持ちに蓋をしてカップを持ち直して液体をすすった。
ずるずる。汚い音だと思う。けれど、熱いのだから仕方がない。
「 んん、」
「……」
「…おはようさん、A」
「おはよう、わいわいさん」
「それやめぇや…何飲んでるん？」
「珈琲。入れてこようか？」
「あー…お願いしてええ？」
「ええよ、顔洗っておいで」
「いつの間にか関西弁うまなったなぁ」
「いつも一緒におるからなぁ」
「…でも普通の方がええわ」
「っふ、ふふ。そう？」
「ん。ごめんやけど、珈琲頼むな」
「うん」
マグカップをローテーブルに置いて離れれば彼もゆっくりと冷たい床に足をつけたのだろう。ベッドの軋む音が聞こえた。
執筆 18.03.25
小さな幸せのお話
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小夜子 | 作成日時：2018年3月22日 2時
