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「ねえ、お父さん。その子、クローンなんだよね？」
私がもう分かり切った質問をぶつけると、そうだよ、と父はきわめて優しく返してきた。
「20年前に大学院生だった、作間龍くんっていう人の細胞から生まれたクローンなんだ」
大学院生ということは、きっと研究室の関係者だった人の細胞をもらったのだろう。
大学院生というのは研究者に片脚を突っ込んでしまっているがゆえに、こうして実験台のようになることも多いらしい。
けれども、私が知りたいのは彼の生まれではなく、彼自身のことだった。
「クローンっていうことは、記憶とかは引き継いでないんだよね？」
「そうなるね。ちゃんと赤ちゃんとして生まれて、全く違う人生を送っているからね」
いくらクローンでも、記憶や経験、学習はその個体固有のものだから、と父は説明した。
ということは、彼には彼自身の記憶があり、経験があり、学習があるということだ。
どんな場所で暮らしていたのか。
どんな人と接してきたのか。
どんなことを話し、聞き、見て、学んできたのか。
私には見当もつかなかった。
その現実味のなさ。
ファンタジーのような響き。
好奇心に支配された私は、ただただ自分の「知りたい」という欲を満たすためだけに、父に質問を投げかけた。
「クローンくんにも、名前はあるの？」
父は私の問いを聞くと、そういえば自己紹介がまだだったな、と言い、眠っている少年の背中をゆさりと揺らす。
すると、その少年は一度身体をよじると、眠そうな瞳をゆっくりと開けた。
きょろりと辺りを見渡す猫のような目。
顔を伏せるように丸くなって熟睡していたから気が付かなかったが、この子も優斗くんに負けず劣らずの整った顔立ちだった。
俗にいうイケメンというやつだろう。
いや、どちらかと言えば美男子という表現の方が良いかもしれない。
まるで、昔の少女漫画に出てきそうな、はっきりとした目鼻立ち。
普段は他人の容姿――それも、男の子の容姿なんて気にしていない優斗くんも、今回ばかりはその美貌に釘付けになっているようだった。
少年は、ここはどこ？と小さく尋ねる。
しかし誰の返答も待たずに、高橋さんのお家ね、と納得したように呟いた。
「俺、寝てたんだ」
小さく欠伸をすると、落ち着いた声でそう言う。
それは独り言なのか、それとも私たちに向けられた言葉なのか、分からないくらい控えめな声量と言い方だった。
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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
