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きっかけは、優斗くんも私も小学校低学年か中学年だった頃、今日と同じように祖母の作ったすき焼き風煮を二人だけで食べた夜のことだった。
夕食後、優斗くんが急にお腹が痛いと騒ぎ出して、リビングのフローリングにうずくまったのだ。
まだ幼かった私はどうしたら良いか分からず、優斗くんのお腹をさすりながら泣いた。
優斗くんが悪い病気になったんじゃないかと怖かったのだ。
無い知恵をどうにか絞り、祖母に電話を掛けたらすぐに駆け付けてきてくれた。
結局、腹痛の原因は生卵に当たったことだった。
今思えば、大したことはなかったのだが、その時の私は心配で仕方がなかった。
もう二度と苦しむ優斗くんを見たくなかった。
私が生卵禁止令を出したのはその次の日のことだった。
このことを龍斗くんに告げると、彼は、なにそれ、と言って小さく笑った。
「Aちゃんって、結構しっかり者だよね。リーダータイプじゃない？」
「そんなことないよ。リーダーって器じゃないし……」
ぶんぶんと首を振る。
リーダーなんて言われたのはこれが初めてだ。
こんなに引っ込み思案で、自分の言いたいこともまともに言えないような私がリーダーなんて、有り得ない。
「どっちかって言うとお母さんとか近所のおばさんタイプじゃね？」
「なにそれ、私が婆くさいって言いたいの？」
「さあね？」
冗談っぽく言って笑う優斗くんの肩を出来る限り最大の力を出して殴る。
すると優斗くんは、やめろって、と大袈裟に痛がった。
お風呂から出ると、時計の短針は既に11時を指していた。
寝るための支度を整え、スクールバッグから学校で借りてきた本を取り出す。
今日借りてきたのは、昭和初期に活躍した作家の短編集。
狂気を帯びた感情を抱え、その身全てを恋愛に投げ込む姿が描かれている。
苦しみを持ち合い、好きでもない人と毎晩身体を重ねる。
そんなデカダンスな世界に引き込まれていく。
こんな作品を読んでいることは誰にも知られたくない。
クラスの子は勿論だけれど、優斗くんや龍斗くんにだけは、死んでも言わないだろう。
私の身体を駆け巡る血は、私ではない他の誰かの肉体を求めている。
こういう作品は好きだ。流行りのライトノベルや、学校ものの現代小説よりも、私に合っている気がする。
私から遠く離れた世界が描かれている作品の方がしっくりくるのだ。
正反対だからぴったりと重なる。
ジグソーパズルのピースと同じ原理だ。
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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
