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けれども研究室はこのクローンを手放したくなかった。
世界初の功績ということもあったが、それ以上に、既に生まれてしまった人間の命を殺すことが出来なかったのだ。
そこで、研究室は静かに、大学当局へ反抗することに決めた。
善か悪か分からない正義の下で、ヒトクローンを育てようと、研究室の人間で決意したのだ。
その後、作られたクローンの胚は母体に入れられ、出産され、研究室の外の人間に知られないように育てられてきた。
「で、今ソファで寝てるその子が、今言った世界初のヒトクローンなの」
凄いでしょ、ここまで育ったんだよ？世界初だよ？と得意げな父。
しかし、優斗くんは顎を上げ、呆れたように口を開いた。
「……話に着いていけない。父さんの言ってる話って冗談とか嘘じゃじゃないよね？」
「まさか俺がこんなしょーもない冗談言うわけないだろー」
父は二杯目のオレンジジュースを飲みながらけらけらと笑う。
間の伸びた、呑気な話し方。
父はどんなに暗い話でも、どんな重要な話でも、いつだってこういう話し方をする。
それは、研究以外の何にも興味がないということの表れだった。
「Aちゃんは、俺の言ってること、信じてくれた？」
「……お父さんの言うこと、本当のことにしか聞こえないし、信じるしかないよ」
さすが、Aちゃんは俺に似て研究者気質だから話が早い。
父はそう言うと、眠っている少年の隣に腰かけた。
「にしても、なんでそのクローンがうちに来たんだよ。隠してないとまずいんでしょ」
「なんでって、研究室なくなっちゃうことになったから」
研究室がなくなる。
それは父が研究の場を失うこと、すなわち、研究者という職を手放すことを意味していた。
父は研究をすることで収入を得ている。そして、私たち家族を養っている。
つまり、父の失職は高橋家が路頭に迷うことと直結しているのだ。
極めて重大なことをさらりと言う父。
大して気にしていなさそうに見えるが、きっとこの調子だと本当に大したことじゃないと思っているのだろう。
けれど、常識人の優斗くんはどうやら色々と思うことがあるらしい。当たり前だ。
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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
