箱庭の中で 1 ページ39
4月。
新年度が始まり、私と龍斗くんは高等部1年に、優斗くんは3年に進級した。
私たちの通う学校は、高等部からの募集を行っていない。
その上、教師陣も中学からそのまま持ち上がりだ。
だから、高校生になったとはいえども、廊下ですれ違う顔ぶれに変わりはない。
変わったことと言えば、校舎渡り廊下で繋がれた隣の棟に移ったこと、毎朝胸元に着けるものがリボンからネクタイに変わったことくらいだ。
中学生の頃も高等部の建物にある資料室へ行くことが度々あったため、建物が変わったことには、そこまで新鮮味がない。
歩くとみしみし鳴る床も、薄汚れた木の机も中学部棟と全く一緒だ。
その一方で、青地に黄色と白のラインが入ったネクタイにはまだ慣れない。
まずこの形がしっくりと来ない。
人が大の字に寝転がったような、間抜けな形から、急にスマートで洗練された形に変わり、正直戸惑っている。
こんな15歳の小娘にネクタイなんか似合うわけがない。
私にはリボンくらいの方が丁度いいのに。
それに、結び方も分からない。
優斗くんが何度も何度も鏡の前でレクチャーしてくれたけれど、私のお粗末な頭と、不器用な手先では、その動きを把握することが出来なかった。
子どもみたいな話だが、結局私のネクタイ結べない問題は、優斗くんに一度結んでもらったものを頭から被ることで落ち着いた。
「俺が結ぶから絶対にそれを解かないようにしろよ」
形式だけの入学式の前日、優斗くんはそう言うと、慣れた手つきで自分の胸に私のネクタイを結び、それをそのまま緩めて外し、私に渡してきた。
「体育の時とか、着替える時間が短いと解きそうになっちゃうかもしれないけど、気をつけろよ」
まるで教育実習の先生みたいな言い方。
大人の自分に酔っている人の声のトーンだ。
仕方ないなあ、という顔をしながらも内心では兄貴面が出来てにやけていることを私は知っている。
こういう時の優斗くんはちょっとだけ可愛い。
大人みたいに振舞えることを嬉しく思っている小学6年生みたい。
年上だけど、兄だけど、それでも可愛らしく思えてしまう。
優斗くんを可愛いと思える時が私は結構好きだ。
なんだか心が通じている気がする。
優斗くんの優しさも弱さも、全部、私と混じり合っているような感覚になる。
兄妹だと感じられる。
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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
