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翌朝。
ろくに眠れていないのに、いつもより早く目覚めた私は、龍斗くんをベッドに残したままリビングへと向かった。
中に人のいる気配がする。
引き戸を少しだけ開け、中を窺う。
温かい空気が漏れ出てきて、氷の膜が張られたように冷たい廊下の床で冷えた足が徐々に溶かされていく。
蛍光灯はついていない。
冬の終わりの朝はまだ暗く、部屋は灰色だった。
部屋の中心でのそのそと動いている姿が見える。
父よりも高く、細い身体付き。
それは紛れもない、私のたった一人の兄だった。
優斗くんは一人で、フレンチカントリー風の四角いダイニングテーブルに向かい、食パンを頬張っていた。
薄っぺらい身体は見慣れたブレザーに包まれている。
どうやら、朝早くに帰ってきて身支度を整えたらしい。
きっと、誰にも会わずに学校へと行く計画を立てていたのだろう。
ひそひそと身を隠す必要なんてない。
いつも通り堂々とリビングへ行き、一緒に朝ご飯を食べればいい。
そのはずだ。
けれども、中に入れない。
昨日のことを考えると、自分にやましいことなんか一つもないのに、顔を合わせてはいけないような気がしてくる。
恐る恐る扉を開き、ゆっくりと中へ入る。
優斗くんまでの距離、わずか2メートル。
普通に歩けば、たったの2秒。
しかし、その距離を、10秒ほどかけて埋めていこうとする。
すり足で2歩目を出そうとした瞬間、優斗くんは白いお皿の隣に置かれたiPhoneから顔を上げた。
目がばっちりと合ってしまった。
「なんだ、Aか。おはよ」
「お、おはよう……」
優斗くんは、一瞬だけ驚いた顔をしたけれど、いつも通りの笑顔をにっこりと見せてきた。
やっぱり、優斗くんは太陽みたいな人だ。
私に対しては常に笑顔。
私に対しては常に明るい。
私に対しては常に優しい。
けれど、どこかで本心を見せてくれていないような気がするのも事実だった。
それは、私と優斗くんの正反対の位置に縛り付け、隔てる壁のようでもあった。
「Aの分もパン焼こうか？」
「いいよ、後で龍斗くんと一緒に食べるから」
龍斗くん、という単語に優斗くんの動きが一瞬固まる。
明らかに不自然な間。
私と優斗くんの間に亀裂が入る。
けれども、優斗くんはそれを見なかった振りするかのように、じゃあジャムだけ机の上に置いておくから、と言って、先ほどと同じようにパンにかぶりついた。
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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
