22 ページ32
「でもね、多分、優斗くんははっきり覚えてる。覚えてるし、本当は今でもずっと一緒にいたいって思ってるはず。だから……」
「だから、毎日あの部屋に入ってるの？」
「え……」
「優斗、毎日あの部屋に入ってるでしょ？学校に行く前と返ってきた後、それと寝る前も」
私だけが知っていると思っていたこと。
優斗くんが、母の部屋を今でも大切に、母が生きているかのように扱っていること。
それを龍斗くんが知っていた。
どうして？何故？
そう考えるよりも先に、身体が驚愕反応を示し、思わず布団ごと飛び起きてしまった。
龍斗くんの信じられないようなものを見た時の猫のような目と視線が合う。
きっと、私の目も驚愕で大きく開かれていることだろう。
でも、その対象はすれ違っている。
龍斗くんは、私が突然飛び起きたことに驚いているはずだ。
でも、私は龍斗くんが何故、優斗くんの日課を知っているのか、それだけが疑問だった。
「知ってたの？」
「もちろん」
「誰に教えてもらったの？」
「誰にも」
「じゃあ、どうして」
「一緒に住んでたら分かる。そんなの」
龍斗くんは何でもないように説明を終え、一言、寒いから布団入って、と私に告げた。
一緒に住んでたら分かる、という言葉を頭の中で反芻させながら、もう一度布団に潜り込む。
勿論、背中を龍斗くんに向けて、だ。
もはや、龍斗くんと同じベッドで寝ていることの気恥ずかしさや、パジャマ姿をばっちりと見られたことなんかはどうでも良かった。
「高橋さんは、『龍斗くんこそが使うべき部屋』って言ってたけど、どう考えても俺が寝るべき部屋じゃないよね。だって、優斗はあの部屋も、お母さんのことも凄く大事に思ってるんでしょ」
龍斗くんはこの数日間、無機質な言葉を紡ぎ、瞳に真っ暗闇を浮かべながら、この家の様々なものを見つめていた。
誰にも気づかれないほど静かに。けれども綿密に。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
