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「Aちゃんってシャンプーどれ使ってる？」
「お風呂場に置いてある透明な容器のやつ。龍斗くんも同じやつ使ってるんじゃないの？」
「そうだけど、俺と違う匂いがする」
首元に龍斗くんの息が当たる。
どうやら、龍斗くんは私のほうを向いているらしい。
それも、なかなかの至近距離で。
びっくりして身体が固まる。
恥ずかしいから反対側を向いてほしい。
もっと離れてほしい。
でも、恥ずかしいと言うのが恥ずかしい。
恥ずかしいと思っていることが知られるくらいなら、耐えた方がましだ。
何も出来ずに、ただひたすら黙りこくる。
せめて、龍斗くんが眠ってくれさえすれば、多少は落ち着けるのに。
ベッドフレームに備え付けられた物置スペースの目覚まし時計。
かち、かちという長針の音がやけにうるさい。
更に耳をすませば、龍斗くんの息遣いが聞こえてくる。
乱れたリズムは明らかに起きている人間のそれだった。
龍斗くんはいつになったら寝るんだろう。
早く寝てくれないと、平穏な心を取り戻すことができないじゃないか。
明日も学校なのに。
確か明日は一日中、卒業式の練習だ。
うちの学校は、全員が内部進学で高等部に上がるから形式だけである。
とはいえ、流石に練習中に眠ってしまったら怒られるに決まっている。
だからさっさと寝たいのに、龍斗くんのことを意識すると、どうにも目が冴えてしまう。
悶々とする私の背中から、ねえ、という龍斗くんの控えめな声が響く。
予想外の響き。
龍斗くんの声が空気を震わせ、身体ごと振動する。
その力に耐えようと、身体がぎゅう、と固くなってしまう。
寝たふりをするべきか、それとも返事をするべきか。私はその一回では決めきれなかった。
「Aちゃん、まだ起きてる？」
「起きてる、けど」
「……聞きたいことがあるんだけどさ」
年の割に低めの声が、真っ暗な部屋の中に浮かぶ。
ぽっかりと浮かんだ音は、そのまま行き場を失い、持て余しているようだ。
この家の中で異質な存在である彼と同じだ。
苦しむ優斗くんの陰で、龍斗くんは今日一日中、ずっと困惑した表情を浮かべていた。
そんな彼の心を見て見ぬふりするなんて。
行き場がないなら、私が捕まえてあげる。
この部屋を君の部屋にしてあげる。
そんな気持ちがいつしか生まれていた。
だから、私は、寝ている振りをしなかったのかもしれない。
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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
