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ずっと床を見つめていたのに、急に顔を上げた龍斗くん。
いつになく話し方ははきはきとしている。
そこから唐突に放たれた言葉に耳を傾ける。



「俺今日寝るところないからこの部屋で寝させてくれない?」




飛び出てきたのは突拍子もなく、また予想外な一言だった。



この部屋、私の部屋で寝させてくれない、って、今この子言ったよね?



目の前がちかちかする。言葉の意味は分かるけれど、全然頭に入ってこない。
落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせるが、心臓の速度はますます上がってくる。



何も言えずにただじっとしていると、龍斗くんは、いきなりでごめん、と言い、詳しい理由を話し始めた。



龍斗くんによると、優斗くんの部屋には鍵がかかっているらしく入れないとのこと。
一度父に助けを乞おうと寝室へ行ったが既にベッドの上で大の字になって就寝中。
リビングのソファで寝られないかと試したが身長が高すぎて断念。
そして最後に選ばれたのが、私の部屋のベッドだったというわけらしい。




突然の申し出に戸惑う。



しかし、よくよく見れば龍斗くんの顔にも落ち着きのなさが表れており、両膝は忙しなく動いている。


龍斗くんだって、きっと困っているのだ。
この状況に。
同年代女子の部屋で寝なくてはいけない状況に。



それに、夕方の少し落ち込んだような龍斗くんを思い出すと無下にすることもできない。
元はと言えば、父と優斗くんは彼の存在を巡り喧嘩したのだ。
その状況が龍斗くんにとって苦しいことは嫌と言うほど分かる。



こんな状態の龍斗くんを「無理です」と突き放し、リビングで寝かせるなんて、なんだか心苦しい。




覚悟を決めた私は目を逸らしたまま、いいよ、と返事をした。




真っ暗の中、一人用のベッドに二人で入り込む。



このベッドがうちに来たのは確か小学3年生の時のこと。


結構良い家具屋さんで揃えたもので、優斗くんは自分の部屋にも同じものがあるのに毎日潜り込んできた。
あの時は、まだ無邪気な子どもで、ただただ楽しかった。
今では優斗くんと一緒に布団に入ることさえ、躊躇ってしまう。
いつの間にか、そういう年になってしまった。



隣に寝転ぶ龍斗くんに背を向け、じっと壁の方を見つめる。
しかし、暗さのせいで、目の前にあるものが壁と認識することさえできない。

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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです!なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています! (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れお | 作者ホームページ:https://peing.net/ja/reosndy  
作成日時:2021年6月26日 21時

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