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この決断が下された土曜夜の高橋家は、手が付けられないほどの混乱を見せた――
「はあ!?何で俺の部屋に作間が来るんだよ!!?父さんの部屋で良いじゃん」
「だって俺一人で寝たいもーん」
「俺だって一人で寝たいわ!!」
「ねえ、優斗の部屋じゃなきゃダメなの?俺、Aちゃんの部屋の方が良い」
「良いわけねえだろ!!Aの部屋に寝泊まりするくらいなら俺の部屋で寝てもらった方がマシだわ!!」
「じゃあ、優斗くんの部屋で二人で仲良く寝てねー」
「ちょっと待ってよ父さん!!リビングとかあるじゃんかよ!!!」
――男3人による言い争いは小一時間続き、結論は、と言うとあえなく優斗くんが敗退。
父の宣言通り、優斗くんの部屋に龍斗くんが寝る、ということになったわけだ。
私の部屋で寝る、なんて突拍子もない発言をしていた龍斗くんも、少しだけ不服そうな顔をしていた。
「……作間、学校で変なことすんなよ。女子部の建物に勝手に行くとか、無しだからな」
「ねえ、Aちゃん、女子部の建物って勝手に行っちゃいけないの?」
「ええ?基本は行っちゃだめだけど、厳しく取り締まられるわけじゃないし……」
「ってAちゃんは言ってるけど、優斗、なんなの?」
「なんなの?ってなんだよ!!?基本は行っちゃだめって言ってるじゃん!俺間違ったこと言ってねえし!!!」
声を荒げる優斗くんと、むすっとした顔つきの龍斗くん。
会話を聞いている分には、仲睦まじい男友達に思える。
が、しかし、二人のその表情には明らかに互いに対する嫌悪感が表れていた。
そして、その二人に挟まれている私の顔には、きっと疲労感あるいは悲壮感が表れているはずだ。
ああ、どうしたものか。
そう考えている間にも、二人の言い争いは加速していく。
女子部と男子部を行き来する話は、制服の着方の話になり、鞄の持ち方の話になり、やがては吊革の掴まり方の話になる。
二人はきっと頭の回転が速い。
次から次へと言葉が流れ出てきて、会話が進む。
一方で幼いころから会話に入ることが苦手な私は、ただただ狼狽えながら、じっとしていることしかできなかった。
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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです!なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています! (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れお | 作者ホームページ:https://peing.net/ja/reosndy
作成日時:2021年6月26日 21時