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だから、私たちとは違う生まれで、違う育ち。
だから、私たちよりもきっと体が弱くて、私たちとはきっと違う生き方をしてきた。
だから、入学方法とか、そんなことよりも、もっと、龍斗くんのことを考えないと。
不公平さに文句を言いたくなる気持ちも分かるけど、でも、そんなことよりも、もっと。
頭の中ではここまで言葉が出てきた。
けれども、音にならない。
金魚のように口をぱくぱくさせることしかできない。
怪訝そうな顔つきで見つめる優斗くんと、笑顔を絶やさない父。
そして、視線が動かないせいで表情が分からない龍斗くんに囲まれ、私はうじうじとしていた。
だんだんと優斗くんの顔つきが不安そうな、憐れむような表情へと変わっていく。
親戚の集まりで年を聞かれ、口をもごもごとさせる私を見る時と同じ表情だ。
そして、大抵その数秒後には優斗くんの口から、私が人と接するのが苦手であるという説明がされ、「もう大丈夫だから」という声が聞こえてくる。
しかし、朝からいつも通りに物事が進まない今日に限っては、優斗くんの声は聞こえてこなかった。
代わりに響いたのは、龍斗くんの何の混じりけもない、透き通った声だった。
「俺のこと、心配してくれてるの？」
思わず避けていた一方向へと視線が動く。
まずい、目が合ってしまう。
そう思った時にはもう既に遅く、私はまたもや、あの猫のような瞳に拘束された。
「……良い人」
「へ？」
「ようやく目が合ったね。俺は案外丈夫だから心配しないで、ありがと」
小さく笑う龍斗くん。
真顔の時より、何倍も幼い印象の笑顔。
私が心に秘めた言葉はいつも誰にも届かない。
いや、誰にも届かないようにしてきた。
ただ押し殺す。
そこになかったかのように振舞う。
そうして私はここまで生きてきたのだ。
しかし、今日は、頭の中でぐるりと何周もさせた思考が音として、私以外の人の声で外在化された。
自分の思っていることなのに、自分の中にない。
自分の考えたことなのに、他の人の声としてそこに在る。
それが少しおかしくて、くすぐったくて、でもどうしたら良いか分からなくて、私はにこにこしている龍斗くんをただ見つめることしかできなかった。
やっぱり龍斗くんと目を合わせたら石になった。
でも、怖さはない。
もう、目を合わせたくないとは思わない。
身体は硬直しているけれど、心はなぜだか自由になれた気がした。
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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
