005/不思議な夢 ページ5
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【A視点】
瞼を閉じていても明るい。
もう朝になったの?そう思い目を開けてみれば、私とそっくりの男の子が
私と同じ模様の着物を着ていて腰には刀が差してあって、耳には私しか持っていない筈の父の形見の耳飾り。
その男の子は眉を下げて、哀しそうな申し訳なさそうな顔をしている。
なんでそんな顔をするのだろう?何か、あったのだろうか。
「ごめんなあ」
優しい声が、私にお詫びを告げる。
「なんで謝るの?私は貴方に何かされた覚えはないよ」
そう言えば、彼は更に眉を下げてしまった。
「君に大切なものを失わせてしまった」
「え。私は何も失っていないよ」
彼は私の元に寄って、頭を撫でた。猫の様に、ならない喉を鳴らしたくなる程、優しい撫で方だった。
まるで、父さんを思い出す様な、優しい・・・
「いきなりこんな事を言うのは、自分でもおかしいと思うんだ」
撫でるのを辞めて、男の人は話し始める。
・・・・・・もう少し撫てくれても良いのになあ、なんて。
「俺もできる限り、手助けするから。大切な人を救ってくれないか」
「?それは貴方の大切な人なの?貴方じゃできないの?」
「・・・・・いや。いつかAの大切な人にもなる。ああ、俺じゃあ救えないんだよ。」
ふわふわした声で、彼は私の名前をごく自然に呼ぶ。私もそれを当たり前に思ってしまった。
とても不思議だ。
「自分勝手極まりないことはわかっている。でも、」
「・・・・・・いいよ」
頷かなければ、果たさなければいけない気がして。自分でも驚くほどすんなり首を縦に振る。
まるで、自分じゃないみたい。
目の前の彼は驚いた後、優しく微笑って、
「ありがとう」
そう言った。
瞬間、光が辺りを包んだ。その眩しさに思わず瞳を瞑る。
次に瞳を開けた時には、現実だった。
あれは、ただの夢だったのかな。否、違うと心が否定する。
私は、自分そっくりの彼の笑顔を思い出した。
また、夢で会えるだろうか。
そうしたら、また頭を撫でてもらいたいな、そんな風に考えてしまうほど、彼は温かかった。
そういえば、約束。“大切な人を守ってくれ”って言っていた。
大切な人・・・家族、だろうか。なんて、考えてみたり。
ただの夢かも知れない事をこんなにも真剣に考える。
きっとあれは、夢なんかじゃあ無いんだ。
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廣岡唯 - 面白い続きが観たい…頑張れよ (2022年11月5日 12時) (レス) @page5 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rin華 | 作成日時:2022年8月9日 13時