003/竈門炭長女の優れた能力 ページ3
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「お姉ちゃん」
「禰豆子」
少し歩いたAに、親しげに声を掛ける少女がいた。
「六太を寝かしつけてたんだ。大騒ぎするから」
Aの妹、竈門家次女、竈門禰豆子。禰豆子の背に背負われているのは竈門家の末っ子、竈門六太。
「お父さんが死んじゃって寂しいのよね。みんなお姉ちゃんにくっついて回るようになった」
竈門炭治郎らの父で葵枝の夫である竈門炭十郎は今は亡き人。みんな炭十郎が他界してから前にも増してAについて回ると語った。
「いってらっしゃい」
禰豆子は笑顔でAを見送った。
生活は楽じゃないけど幸せだな、
雪の降る中、その天候に感化されたようにAはひとり考えた。
「(でも人生には空模様があるからな。移ろって動いていく。ずっと晴れ続けることはないし、ずっと雪が降り続けることもない。そして幸せが壊れる時には、いつも血の匂いがする)」
そんなことを思い考えながらAは足を進めた。
「まあAちゃん」
山の麓の町に着くと直ぐに外に出ていた町人が笑顔でAを迎えた。
「こんな日に山を降りてきたのかい。よく働くねぇ。風邪ひくよ」
「この間は障子を張り替えてくれてありがとう」
「おーい炭を売ってくれ」
「こっちにも炭をちょうだい」
どうやら優しく親切なAを町人たちも慕っているようで。Aは表情を緩めた。
「あ〜〜っ、A、ちょうど良かったあ」
そんなAに襟を掴まれた半泣きの男が声を掛ける。その手には布で包まれている粉々の皿が抱えられていた。
「皿を割った犯人にされてんだよ俺〜〜っ、助けてくれよお」
嗅いでくれ!!
とつけ加え懇願する男。
その男が持つ割れた皿にAは鼻を近づける。クンクン、と皿の匂いを嗅ぐA。
一際強くクン、と匂いを吸って感じた匂いは、猫の匂い。
「猫の匂いがする」
Aがそう告げると、驚いた顔をして男性の襟を離す女性。
「あら猫なの?」
「ほらぁああ!!」
何故、こんなにも女性があっさりAの言葉に頷くのか。
それはAの鼻が利くから。匂いでわかってしまうのだ、Aは。
その鼻は色々な人の役に立ってきた。
そしてAは素直で優しい。だからこそ町人はAは信じている。
「A、ちょっと荷物運ぶの手伝ってくれねぇか」
困っているお爺さんに呼ばれたAは其方へと向かった。
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廣岡唯 - 面白い続きが観たい…頑張れよ (2022年11月5日 12時) (レス) @page5 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rin華 | 作成日時:2022年8月9日 13時