声に出した言葉 ページ12
路地裏に連れ込まれそうになり恐怖でギュッと目をつぶったその時、体がグイッと後ろに引き寄せられた。
恐る恐る目を開けると、いつも眩しい笑顔を向けてくれる彼がいた。
『ー！！』
(守君…！一郎太君…！助けてくれたんだ……。)
｢…何だお前ら。｣
円堂と風丸に邪魔され、腹を立てたようで2人を睨みながら不良達が告げる。
｢手、離してください。｣
円堂がAを引き寄せながら言った。
｢嫌がってますよね。警察呼びますよ？｣
風丸がケータイに110の文字を表示させた。それを見た不良はAの腕を離し、舌打ちをして何処かに去って行った。
不良達が見えなくなりAがほっと胸を撫で下ろすと、ガバッと円堂に抱きしめられた。
『！！』
(え？)
急に抱きしめられた事に驚き、今自分がどうなっているのか分かると同時に顔が赤くなるのが分かった。
｢はぁ〜…。良かった。心配したんだぜ？｣
耳元で円堂が何かを囁いていることは分かったが、緊張で頭がグルグルしている気がした。
Aが顔を真っ赤にしていることに気付いた風丸が呆れながら円堂に言った。
｢……円堂。そろそろ離してやれ。｣
円堂が勢いよく離れる。
｢あ！悪い！って大丈夫か？！顔真っ赤だぞ？！｣
円堂に顔を覗き込まれるが目を逸らしてしまう。
(は、恥ずかしくて守君の事見れないよ…。)
｢…多分大丈夫だ。ほら買出し行くんだろ？俺達も一緒に行くよ。｣
風丸に手を引かれ歩き始める。
｢あ！俺もAと手繋ぐ！｣
そう言って反対側の手を円堂が引いた。
3人で手を繋ぎながらスーパーまで歩き、スポーツドリンクを運べるだけ買って部室まで戻った。
《買出し手伝ってくれてありがとうございます！》
｢気にすんな！また買出し行く時あったらちゃんと言えよ？｣
｢俺達でよかったら一緒に行くからな。｣
《ありがとうございます！》
そして、2人が練習に戻ろうとした時Aは口を開いた。
『〖助けてくれて、ありがとう！〗』
｢｢？！｣｣
初めてAの声を聞いた2人は驚いて振り向いた。生まれつき言葉を聞いたことが無いからか上手く発音は出来ていないが、“助けてくれてありがとう”と言っているのはしっかりと聞き取れた。
｢｢おう！｣｣
2人はAに笑顔を向け、駆け足でフィールドに向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 24人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りぃこ - なんだこの優しい世界｡｡。 ストーリーにも泣けたけどコメ欄にも泣けた。 いい人にもいい作品にも出会えた。 もう悔いることは何もない。しばらくこの余韻に浸っていよう。 (2020年8月7日 3時) (
レス) id: 93f58bce86 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - でも、体には気をつけて頑張って下さい！こんな事しか書けなくてすみません。でも書かせて下さい！これからもずっと応援しています！！ (2020年6月29日 20時) (レス) id: 8805bfa010 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - この小説を作ってくれてありがとうござます！！私も聴覚の障害はないのですが、この小説を読んでいると障害を持っている人達の気持ちが分かってとても感謝しています！！このご時世いろいろ大変だと思います！ (2020年6月29日 20時) (レス) id: 8805bfa010 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちー - 一緒に頑張りましょう！ (2020年6月28日 4時) (レス) id: 181c5fcd33 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちー - でも、今でも同年代の男の子を見ると、私の事を噂しているのではないかと、思ったりしています。後、私は、アスペルガー症候群という自閉症です。なのでヒトについてよく分かりません。この苦しみは理解されることはないと思います。 (2020年6月28日 4時) (レス) id: 181c5fcd33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彼岸ノ撫子 | 作成日時：2020年6月4日 12時
