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「あ、遠藤や」
「え」
思わず持っていた青汁を落としそうになった。慌ててそれを後ろ手に隠して、私に声をかけた彼に笑顔を作る。
「おつかれ、侑くん」
ぎこちなくはなかっただろうか。自然に笑えただろうか。
そんなことを考えながら、しれっと隣に並んで立つ彼の横顔を盗み見る。
制汗剤のにおいがふんわりと私の鼻をかすめた。このままここにいると、
最終時刻を過ぎてしまう。
私が校門の方へ歩き始めたら、侑くんはこれまたしれっと私の隣を歩き始めた。
「なぁ、もしかして今日しゃべっとったの、遠藤？」
「あ、うん、そう」
しゃべる、というのは間違いなく今日の最終下校前の放送のことだ。頷いた私に、侑くんはやっぱり、と笑った。
「侑くんは、練習よな」
「せやで」
前の方に、男バレと思しき集団が歩いているのが見える。
たぶん私を見つけた侑くんが、自販機の方にわざわざ寄ってきてくれたのだろう。
そう思うと、つい頬が緩んだ。素直に嬉しかった。
これ以上一緒にいたらボロが出てしまいそうで嫌なのに、この時間が永遠に続けばいいとさえ思う。
なんだか悔しい。
そう思ってつま先に視線を落とすと、侑くんがあっ、と驚いたような声を上げた。
「青汁」
「あっ」
侑くんの目に入らないようにうまく隠していたつもりだったけれど、見つかってしまった。
こんなの私が侑くんのことを好きだと言っているようなもんだ、と体から血の気が引いていく。
ちがう、これは、いや、ちがくはないんだけど、
「お前そんなに青汁好きやったんか」
「まぁね、健康にいいし」
適当に取り繕ってごまかした。
そんな態度は、侑くんにはきっと通用しないと分かっていながら。
青汁をちびちびと飲みながらバス停でバスを待つ。
思い出したように侑くんが時々話題を振ってきたけれど、私はこの状況が恥ずかしくていたたまれなかった。変な返事しかしなかったような気がする。
「遠藤」
「ん？」
名前を呼ばれて、彼の顔を見上げる。
ちょっとだけあどけない笑顔を見せた彼は、ちょうど来たバスに私を引きずり込んだ。そのバスは、私の家とは違う方に行ってしまうのに。
「寄り道しようや、送るから」
拒否権はないらしい。
発車したバスの中で、私はどういう顔をしていいかわからなかった。
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ひな(プロフ) - なぎささん» 初めまして、コメントありがとうございます！ドキドキしていただけてとっても嬉しいです！こちらこそ閲覧ありがとうございました！ (2018年9月20日 17時) (
レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。全体的に最高すぎて終始ドキドキしっぱなしで読ませていただきました…素敵なお話をありがとうございました…！ (2018年9月16日 16時) (レス) id: 2a6bd4d84b (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - あをいけさん» ありがとうございますイベント海コンビニのながれをつくりたかったのでうれしいですまじでありがとう (2018年9月14日 23時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
あをいけ(プロフ) - 海の次にある選択肢がビニコンなの最高に好きですごちそうさまでした (2018年9月14日 22時) (レス) id: 02a650837d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひな
| 作者ホームページ：https://twitter.com/pp__synd
作成日時：2018年9月14日 21時
