ジレンマの奥底 ページ6
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誰もいない静かな放送室で一人、ブラインドの隙間から差す西日に目を細めた。
徐々に日が短くなってきたのに、神無月の足音を感じる。最終下校時刻を知らせるのは放送部の仕事だ。
だから、部のみんなで順番を回して一人ずつ誰かがその時間まで残る。今日は私の番だった。
窓の外から聞こえる色んな運動部の声をぼうっと聴きながら、考えるのは侑くんのこと。
振替休日が明けてから、なんとなく侑くんの方を見られなかった私に、彼は何事もなかったかのようにけろりと接してきたのだった。
まるであの非日常の体育祭がまるまる白昼夢であったかのように。
私ばっかり感情を転がされて、馬鹿みたいだと思う。自分でも。
それでも、私は変な風に彼のことを考えずにはいられない。
「好きなんかじゃない」と自分に言い聞かせ始めた時点で、そもそも負けなのである。おとなしく感情を認めてしまうのは癪だけれど、こうもかき乱されてしまえば、認めざるを得ない。
学校に行けば侑くんに会えるけど、会ってもこっちの平生がめちゃくちゃになるだけで、だから会いたくない。
同じ教室にいる侑くんを、見つめていたい。でも、それがバレたらまた笑われそうで、『かわいい子』をいつまでも引きずってるのかと馬鹿にされそうで、見つめたくない。
片思いってなんてめんどくさいんだろう。ジレンマにもみくちゃにされた私の心は、それ以外のことを考えられない。
悔しい、あんな奴に、ただのクラスメートに、そんな気持ちとせめぎあうのは、彼が好きだという気持ち。
設定したアラームが鳴って、ハッと現実に引き戻された。マイクのボリュームを上げて、マニュアルなしでも諳んじられるようになってしまった定型文を吐き出す。
「最終下校十五分前です。校舎内にいる人は――」
私の仕事は終わりだ。
足元に適当に置いていたリュックを背負って、放送室のカギを閉めた。
人気のない校舎を抜け靴を履き替えたとき、生徒玄関のすぐ近くにある自販機がふと目に入った。
昼休みに購買に行った時のおつりがまだスカートのポケットに入っていたから、つい自販機に入れた。
「……いや馬鹿じゃん」
出てきた青汁を見て、我ながら何をやっているんだろうかと肩をすくめる。あの日の夢心地の欠片を手繰り寄せるような自分が、なんだかあほみたいだ。紙パックにストローを差し込んで、すする。口の中に飛び込む苦味が、妙に心に刺さった。
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ひな(プロフ) - なぎささん» 初めまして、コメントありがとうございます！ドキドキしていただけてとっても嬉しいです！こちらこそ閲覧ありがとうございました！ (2018年9月20日 17時) (
レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。全体的に最高すぎて終始ドキドキしっぱなしで読ませていただきました…素敵なお話をありがとうございました…！ (2018年9月16日 16時) (レス) id: 2a6bd4d84b (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - あをいけさん» ありがとうございますイベント海コンビニのながれをつくりたかったのでうれしいですまじでありがとう (2018年9月14日 23時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
あをいけ(プロフ) - 海の次にある選択肢がビニコンなの最高に好きですごちそうさまでした (2018年9月14日 22時) (レス) id: 02a650837d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひな
| 作者ホームページ：https://twitter.com/pp__synd
作成日時：2018年9月14日 21時
