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「なんやそれ」


どう答えていいのかわからなかった。
あの場限りの冗談だと思っていたのに。

侑くんはぼんやりとグラウンドを眺めているだけで、私の方を見ようともしない。
その二択の正解は、侑くんとゴールにいた係の人しか知らない。今は確かべるすべも残っていない。

何も言わない私に、痺れを切らしたように侑くんが言う。


「まぁ、教えへんけど」


なんだよそれ、と口を尖らせた私を見た侑くんはまた変な声を上げて笑い、ついてきてや、と私に言う。


「どうせ大縄も人足りとるし、俺ら二人がいなくなったかて誰も気にせん」
「まぁ、そうだけど」


言われるがままグラウンドを抜け、校舎の方へと歩く。じりじりと日差しがうなじを焦がすのが嫌でゴムを外して、結び癖の付いた髪を適当に手櫛で整えた。
自動販売機の前で止まった侑くんは、自分の身長と同じくらいの高さのそれを見て、うげえ、と漏らした。


「あっはは、ほとんど売り切れとるやん」


笑い飛ばす私に、彼は顔をしかめた。今日は体育祭で、しかもめちゃくちゃ暑い。
雲一つない空が憎らしいくらい私たちは焼かれているのだ。
自販機の飲み物がほぼ完売するのも想像に難くないだろう。

なんやねん、と肩を落とした彼は、ふと顔を上げた。


「遠藤、お前青汁飲めるか?」
「え、ああ、うん、飲めるけど」


よっしゃ、とつぶやいたと思うと、侑くんはハーフパンツの尻ポケットに突っ込んでいた小銭を自販機に入れて、紙パックの青汁のボタンを押した。
青汁だけはこの炎天下に似合わないからか、売り切れの赤いランプの中にただぽつんと販売中の青いランプをつけていたのだった。

ほれ、と投げてよこされた緑色の紙パックを眺める。今青汁をもらっても、正直困るんだけど。
そう思ったけれど、侑くんは満足そうに笑って、ほな戻るか、と言った。

再び侑くんの後ろについて歩きながら、紙パックにストローを差す。
苦いような何とも言えない味はこの天気にも体育祭にも何とも釣り合ってないような気がしたが、別に青汁が嫌いなわけじゃないから、どうでもよかった。


「なあ、で、どこ行きよるん」


手元を見ながら歩いていたとはいえ、さすがに侑くんが明らかにグラウンドとは違う方向へと歩いていることに気づかないほど鈍くもない。
振り返っていたずらっ子のように笑った彼は、着いた先、つまりは第二体育館を指さしてから、避暑や、と私にのたまった。

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ひな(プロフ) - なぎささん» 初めまして、コメントありがとうございます!ドキドキしていただけてとっても嬉しいです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2018年9月20日 17時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。全体的に最高すぎて終始ドキドキしっぱなしで読ませていただきました…素敵なお話をありがとうございました…! (2018年9月16日 16時) (レス) id: 2a6bd4d84b (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - あをいけさん» ありがとうございますイベント海コンビニのながれをつくりたかったのでうれしいですまじでありがとう (2018年9月14日 23時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
あをいけ(プロフ) - 海の次にある選択肢がビニコンなの最高に好きですごちそうさまでした (2018年9月14日 22時) (レス) id: 02a650837d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひな | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd  
作成日時:2018年9月14日 21時

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