検索窓
今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:31,113 hit

告白したら、された ページ12

放送室で一人課題のプリントを埋めながら、ぼんやりと窓の外を見やる。
侑くんと海に行った日よりもさらに日は短くなっていて、まだ六時というのに外はもう薄暗かった。

ほんとうに、とんだ災難だった。

よりにもよって侑くんに嘘告することになるなんて。
午後の授業もそのことで頭がいっぱいで、何も入ってこなかった。


――嫌や、また出直して来い。


侑くんはそう言った。
嫌だという言葉は明確な形をもって私の胸を抉った。
思い出すだけで呼吸が苦しい。空気が泥みたいに重くて、上手に息ができない。
目の奥がじわじわと熱くなって、口の端から小さな嗚咽が漏れる。

滲んだ視界から零れ落ちた生温いのが、プリントに丸いシミを作った。
自分の気持ちを言葉にしたのは初めてだった、というのもさらに追い打ちをかけたのだろうと思う。

冗談だと分かっているのに、まるで本気だったかのように受け止めている。
そんな私は、不器用なのかもしれない。冗談を真に受けることが常であるくらいには。

椅子を引いて天井を見上げると、切れて交換されたばかりの蛍光灯の白い光が目に刺さる。
はやく涙が引いてくれないと、ぐずぐずの声で放送をする羽目になってしまうのだ。それだけは勘弁である。

何かほかのことで気を紛らわそうとポケットに突っ込んでいたイヤホンを引っ張り出し、音量を上げて音楽を流す。
耳をつんざくような大音量に一瞬だけ顔をしかめたけれど、慣れてしまえば平気だ。

さっきよりかは気持ち軽くなった空気を吸って、大好きな歌を口ずさむ。
これで涙も引っ込んでくれるだろうと、再び課題のプリントとにらめっこを始めた。

ひと段落着いたところで時計を見る。もうすぐ放送の時刻だ。
大音量に設定した携帯は、このままだととんでもない音量のアラームで私の鼓膜を突き刺すだろう。
音量を戻し、ぼんやりとブラインドの外を眺めた。
夜の濃紺につつまれたグラウンドでは、サッカー部やラグビー部が声を出しながら球を追っている。

彼らに水を差すのも悪いと知りながら、マイクのスイッチをオンにした。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (89 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
50人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 宮侑 , 雛鳥の夢
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ひな(プロフ) - なぎささん» 初めまして、コメントありがとうございます!ドキドキしていただけてとっても嬉しいです!こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2018年9月20日 17時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。全体的に最高すぎて終始ドキドキしっぱなしで読ませていただきました…素敵なお話をありがとうございました…! (2018年9月16日 16時) (レス) id: 2a6bd4d84b (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - あをいけさん» ありがとうございますイベント海コンビニのながれをつくりたかったのでうれしいですまじでありがとう (2018年9月14日 23時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
あをいけ(プロフ) - 海の次にある選択肢がビニコンなの最高に好きですごちそうさまでした (2018年9月14日 22時) (レス) id: 02a650837d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ひな | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd  
作成日時:2018年9月14日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。