＊９＊ ―過去― ページ10
それ以来、俺とAはパーティーのたびに抜け出しては遊ぶようになった。
この頃から聖川や蘭ちゃんとも会うようになり、よく一緒に遊んでいたがA程ではない。
抜け出すのも、大人たちに怒られない程度に節度をもってやっていたし、大人たちも特に何も言ってこなかった。
そもそもバレないようにやっていたから。
ごく稀に怒られたのは、道に迷って帰りが遅くなったり、Aが転んで怪我をしてしまった時。
だから、道を覚えたり周りに気を配るのは得意だ。
怒られるのは勿論嫌だったけど、それよりもAを悲しませることはもっと嫌だったから。
当時から俺はAのことが大好きだった。
「俺がAを守りたい」と思っていた。
でもそんなこと口に出せるはずが無い。
周りの大人たちを見れば痛いほどに理解できた。
憲法により建前上廃止された許嫁制度も上流階級では未だに根強く残っている。
俺のダディとマミィは恋愛結婚だけど、俺もそうとは限らない。
現に、ダディからすればその幸せを壊したのが俺なんだ。
俺を産んでマミィは亡くなった。
自分で考えるのも何だけど、俺を産んでいなければマミィは今も生きていたかもしれない。
ダディがそんな俺を幸せにさせるはずがない。
仮に俺がダディの立場だったら、財閥のために利用するにだろう。
一方、Aにも似たようなことが言えた。
直接聞いたことは無いけれど、Aも俺を好いていたんだと思う。
そうであればいいな、と思っていた。
でもAは桜糀財閥の一人娘、つまりは次期総裁だ。
元来体が弱いAが財閥を指揮するのは難しく、事実上は結婚相手が総裁となる。
この場合、結婚相手はどうしても同じような財閥の子息から選ばれるだろう。
ダディは俺にキツいだけで元々は優しい人だから、親友の大切な一人娘と俺なんかを結婚させるはずがない。
幼いながらそれを理解していた俺は、溢れそうな気持ちを隠して接してきた。
そうまでしても一緒にいたかった。
例え関係が違くとも、“幼馴染”としてなら、ずっと一緒にいれると思っていた。
そんな夢さえも壊れる日が来るとは知らずに。
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儚霧(プロフ) - タナトフィリアさん» コメ有難うございます。ネタはあっても文章が纏まらないので死ぬほど亀更新ですが、精一杯頑張らせて頂く所存です。これからも宜しくお願いしますm(__)m (2018年7月8日 16時) (
レス) id: 4f1bc6d88e (このIDを非表示/違反報告)
タナトフィリア - とっても面白いです！続きがとても気になります！更新楽しみに待ってます！ (2018年7月8日 13時) (レス) id: 41c9a6a89d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：儚霧 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年2月14日 1時
