＊６＊ ページ7
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夜空の一部を切り取ったようで
引き込まれそうになるほど黒い髪と瞳
雪のように白く透き通った肌
白いドレスに身を包む姿は、以前と変わらない。
ただ、Aが座っていたのはベンチではなかった。
「神宮寺さん？」
その高く澄み透った甘い声も、昔と変わらない。
なのに何故＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
車椅子に座っている？
俺を“神宮寺さん”と呼ぶ？
ああ、昔みたいにAが俺を“レンくん”って呼んでくれることはもうないんだ。
この5年で、きっとAは変わってしまった。
ならいっそ、俺も別人のように振る舞おうか。
「こんばんは、レディ」
口から出た言葉は、あまりにも無機質だった。
「こんばんは、……5年ぶりですね。
神宮寺さん、すっかり格好よくなってて驚きました」
「それは光栄だね。
レディも、綺麗だよ」
「ありがとうございます」
「5年ぶり」という言葉が鋭利な刃物となって俺の胸を突き刺す。
Aはベンチの隣にいたから、俺はベンチに座った。
昔座っていたところより少しだけ右側のここは、本来ならAが座る場所。
「気になりますか、
「……」
気にならないと言えば、嘘になる。
でも、自分から聞く勇気なんて無かった。
「ずっとベッドにいたのと、治療の副作用とでまだ歩けなくて。
リハビリが終われば歩けるようになりますから」
そう言うAに、何て声を掛ければ良いのかわからない。
頭が回らない。
言葉が出て来ない。
あれ、息ってどうするんだっけ。
「……そっか」
なんとか口から出した言葉は、また無機質で。
なんでもっと良いことが言えないんだ。
そう自己嫌悪しながらAを見ると、病人特有の儚さのようなものが感じられた。
細い手首は俺が軽く力を入れただけで折れてしまいそうで、
俯く横顔は今にも消えてしまいそうだった。
「神宮寺さん？」
そう呼ばれて、俺が長いことAを見つめていたことに気がついた。
自然とAに手が伸びる。
今Aを抱き締めて俺の元へ縛り付けておかないと、Aがまたいなくなってしまうような気がして。
俺が抱きしめてもAは俺を拒みはしなかったが、俺を抱き返すこともなかった。
「……ごめんなさい」
Aのその一言は、俺を現実に引き戻すには十分過ぎた。
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儚霧(プロフ) - タナトフィリアさん» コメ有難うございます。ネタはあっても文章が纏まらないので死ぬほど亀更新ですが、精一杯頑張らせて頂く所存です。これからも宜しくお願いしますm(__)m (2018年7月8日 16時) (
レス) id: 4f1bc6d88e (このIDを非表示/違反報告)
タナトフィリア - とっても面白いです！続きがとても気になります！更新楽しみに待ってます！ (2018年7月8日 13時) (レス) id: 41c9a6a89d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：儚霧 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年2月14日 1時
