＊１０＊―過去― ページ11
Aの11歳の誕生日パーティーのこと。
俺達はいつも通りパーティーを抜け出して、中庭のベンチに座っていた。
「そうだ、A」
「なぁに？」
「ちょっと、目瞑っててくれるかな」
「うん、いいよ」
俺は目を瞑ったAにイヤリングを着けた。
ガラスドームに赤い小薔薇が入ったイヤリング。
「もう見てもいい？」
「うん、俺からの誕生日プレゼント」
「綺麗……ありがとう、レンくん」
俺が胸ポケットに忍ばせておいた手鏡を見せると、映ったイヤリングを見てとても喜んでくれた。
白い肌に赤い薔薇は良く映えていて、これを選んで良かったな、なんて。
それからというもの、Aの誕生日には赤い薔薇のアクセサリーを送るようになった。
12歳の時はバレッタ。
13歳の時はブレスレット。
14歳の時はネックレス。
毎年毎年、本当に喜んでくれて。
でもこの気持ちを伝えることはできないから、花言葉で表していた。
赤い薔薇の花言葉は【愛情】
「ねえレンくん」
「何？」
「花言葉って知ってる？」
「え、あ……うん、一応」
Aのそれには正直驚いて、咄嗟に話題を変えようとした。
単なる興味だったらしいけど。
「そう言えば、薔薇って本数にも意味があるって知ってた？」
「そうなの？
レンくん物知りだね」
「俺も詳しくは知らないけど……。
1本だと“あなただけ”とか」
「あ、聞いたことある」
「確か1001本くらいまであったかな」
「1001本の意味ってなあに？」
「ごめん、覚えてないや」
そんな感じで薔薇の話は終わった。
俺としては終わってほっとしたんだけど、その時が永遠に続いていれば幸せだったのかもしれないと、今になって思う。
「……そろそろ戻ろうか」
「うん、また遊びに来てね」
「もちろん」
会場に戻ろうと立ち上がった時、Aはふらついて倒れそうになった。
「大丈夫？」
「ありがとう……大丈、夫ｺﾞﾎｯｶﾊｯ」
口元を抑えて咳をしたAだったが、その手では隠しきれないほどの血が出ていた。
それはネックレスの薔薇と同じ色で。
「ご……め、レンくんの、服……汚しちゃｶﾊｯ」
「服なんてどうでもいい！
喋らないで！！」
その後もAの喀血は続いて、俺はずっと背中を摩っていた。
「レ……ン、く……」
「A？」
＿＿＿＿＿約束、守れそうにないや。
Aはそう笑って意識を失った。
数日後、Aの渡米治療が決定した。
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儚霧(プロフ) - タナトフィリアさん» コメ有難うございます。ネタはあっても文章が纏まらないので死ぬほど亀更新ですが、精一杯頑張らせて頂く所存です。これからも宜しくお願いしますm(__)m (2018年7月8日 16時) (
レス) id: 4f1bc6d88e (このIDを非表示/違反報告)
タナトフィリア - とっても面白いです！続きがとても気になります！更新楽しみに待ってます！ (2018年7月8日 13時) (レス) id: 41c9a6a89d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：儚霧 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年2月14日 1時
