＊１７＊ ページ18
その日はドラマのクランクアップだった。
バレンタイン前日ということもあってか、俺の手にはたくさんのチョコレート。
勿論、「チョコレートが嫌い」だなんて俺からは言い出せない。
Aは毎年ティラミスを作ってくれて、
だからティラミスだけは好きだったんだよな
なんて思い出したり。
現場を出て携帯の電源を入れると、21時。
18時辺りから不在着信が60件も来ていた。
発信源は兄貴。
急いでメッセージを再生した。
『レン、仕事中か？
終わり次第、俺が送った住所まで来てくれ。
出来る限り急げ』
兄貴から送られてきた住所を調べると、病院だった。
それも、桜糀財閥から多額の資金を得ている、先進医療に特化した病院。
……いや、まさかな。
でもやっぱり心配で。
すぐにタクシーを拾って病院へ向かった。
病院の正面玄関には橘さんが立っていた。
「橘さん、あの、｣
「レン様、お忙しい中申し訳ございません。
心してお聞きください。
……お嬢様が、倒れられました｣
「……っ｣
「こちらです｣
橘さんに案内された病室には何度か来た覚えがあった。
幼い頃のAは体調を崩す度、
この病室で安静にしていたんだと思い出した。
「失礼します。
レン様が到着なされました｣
「入ってくれ｣
広い病室には國春さんと楓さん、兄貴、A担当の医師。
点滴を打たれて眠っているAは痛々しかった。
モニターに写るバイタルは安定しているけれど
数時間前までは危なかったのだろうか。
その場にいることが出来なかった自分に虫酸が走った。
「忙しい中呼び出してしまってすまないね｣
「いえ、……それよりAは」
「お嬢様は5時間前に倒れられましたが、2時間前に一度目を覚ましておいでです。
一時的な疲労と貧血によるものですので、ご心配は無用かと。
1週間もすれば退院可能でしょう」
それから少しして、一先ずは大丈夫ということで、俺の代理で来ていた兄貴も勿論、國春さんと楓さんも帰宅する流れになった。
橘さんは一度桜糀家に戻った後、荷物を整理して再びこちらに来るという。
「……俺はまだ、残っていてもいいですか」
「私たちとしては構わないが……、明日の仕事に差し支えないかい」
「はい、大丈夫です」
「それなら、私たちは失礼するよ。
Aをよろしく、レンくん」
最後に病室を出ようとした橘さんが、俺にあるものを差し出した。
「お嬢様からです」
それは、Aからの手紙だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 91人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
儚霧(プロフ) - タナトフィリアさん» コメ有難うございます。ネタはあっても文章が纏まらないので死ぬほど亀更新ですが、精一杯頑張らせて頂く所存です。これからも宜しくお願いしますm(__)m (2018年7月8日 16時) (
レス) id: 4f1bc6d88e (このIDを非表示/違反報告)
タナトフィリア - とっても面白いです！続きがとても気になります！更新楽しみに待ってます！ (2018年7月8日 13時) (レス) id: 41c9a6a89d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：儚霧 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年2月14日 1時
