かわいいの条件｡

条件その19｡ ページ19

「川崎くん…サッカー終わった？」

「うん、さっき終わったとこ｡…今から着替えてくるから、ちょっと待って」

「うん、でもその前に…」

ここで終わらせておこう｡

着替えるの待つのも面倒くさいし｡

「ん？」

そう首をかしげた川崎君に…

「っ…きゃあああああああああああああああああ!!!!!」

叫んだ｡

「え？え？」

何が起こってるのかわからないって顔だね、川崎くん？

大丈夫、これからわかるよ｡

「どうした!？」

ほら、来た｡

「何があったんだ？大丈夫か、柊!!」

涙を流して、怯えている演技｡

「あ…っ」

でもね、ここからは私は何も言わない｡

今ここで「川崎くんに何かされた」って言ってもいいんだけど、そうすると川崎くんが

私に疑問を持ち始めちゃうからね｡

そうなったら依存させてふる、っていうのができないじゃない？

それじゃ面白くないもの｡

今から私がするのは、何も言わない…いや、言えない演技｡

私からは特に何も言わねいけど、さも「川崎君に何かされたけど脅されてて言えない」って

いう空気を出して、サッカー部の人たちが勝手に勘違いしてくれるように仕向けるだけ｡

「柊!？柊!!」

うつむいて震えて、何も言わない私｡

そしたら当然…川崎くんの方に聞くよね？

「柊になんかしたのか、川崎？」

ほら、ね？

「えっ…俺っすか!？なんも関係ないっすよ、俺!こいつが急に叫んで…」

あーあ、それじゃダメだよ川崎くん｡

信じてもらえるわけないじゃない｡

「嘘つくな!お前が何かしたんだろう？正直に言えよ!」

普通の人はそう、主将さんみたいに考えるでしょ｡

二人きりでいた男女、急に女子の方が叫んで、何故か聞いてみても震えて泣きじゃくってる…｡

この状況を見たら、だいたい男子が何かしたのか、それも何も言えないくらいひどい事を？

って考えちゃう｡

あっという間に「被害者」と「加害者」が決まっちゃうの｡

お疲れ様、川崎くん｡

これからもっと、私を楽しませてね？

条件その20｡→←条件その17｡

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