救出。 ページ13
オクタンSide
恋人という形式上、ファーストダンスはAとしなければならない。
少なくとも、貴族の中での常識である。
小さな子供は意中の相手とのダンスに夢見るが、俺の置かれた状況は夢もクソもないような、地獄の鬼が逃げ出した亡者を追うような勢いで女共が押し寄せてきた。
次々と来る女に戸惑う。
キンキンとした高い声や、甘ったるい猫なで声、匂いが混ざり合って何が何だか分からない香水、押し付けられる胸。
世の男性が一度は思い描くハーレムのような光景だが、俺にとっては不愉快極まりない。
Aを探そうにも、こいつ等は付いてくるし、そもそもの話動く事すら無理だ。
親父達はニタニタと笑いながら周りの貴族に挨拶周りしていた。
助け舟も宛も見つからずにただ身を捩って飲み込まれないよう耐えるしかないと思っていたときだった。
見慣れた細く白い腕が俺の前に伸びてきた。
極めつけには俺がプレゼントした翡翠のネックレスを握りしめていた。
絶対的な確信の元、彼女の手を掴む。
ぐいっとかなり強めに引き寄せられ、さっきまでの圧迫感は無くなり代わりに誰かに抱きかかえられていた。
この高すぎず低すぎずの心地よい声はよく聞く声だった。
『はい、オクタビオ救出〜！』
素が出ているが彼女は気付いていない。
「た、助かったぜぇ……。」
『あーあ、髪が崩れちゃってる。』
崩れた髪を軽く手櫛で整えられた。
先程まで俺を囲っていた女がツカツカと無理して履いているであろうヒールを鳴らしてやって来た。
ツンと鼻をつくような甘ったるい香水の匂いや、コテコテに塗りたくった化粧に思わず顔を顰める。
それが大勢来るもんだから本当に嫌になる。
きっとこいつらはレジェンドやシルバ家に酔いしれているだけだろう。
やはり、本気でぶつかり、時にはふざけあえるようなAPEXゲームが俺の生きる場所ということがよく分かった。
「貴女、シルバ様とどういう関係かしら。」
こいつ、挨拶無しに言ったぞ。
きっと、世間なんて知らずにぬくぬくと育った所詮、箱入り娘と言うところだろう。
コルセットで締め付けてはいるが、若干肉がはみ出しているのに温室育ちということを感じた。
Aはどうだろうか。
場合によっては容赦なくこいつを叩き潰すが。
なんていう俺の予想とは真逆で、Aはにこやかに笑っていた。
まるで狂ったかのように、ニコニコと。
瞬時に俺は悟った。
何か良からぬことを考えているな、と。
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おげげいげ - 夢者さん» コメントありがとうございます！良作だなんてそんな……応援、ありがとうございます！ (2021年8月4日 16時) (
レス) id: 2c07cc7f92 (このIDを非表示/違反報告)
夢者(プロフ) - Apex夢があまりにも少なくて更新停止だとかつまらないものが多いのですが、貴方様の小説はとても良作で楽しんで読ませて頂いてます。これからも応援してます。 (2021年7月28日 23時) (レス) id: f5c9ee6f69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おげげいげ | 作成日時：2021年7月4日 16時
