秀才の話 ページ9
そんな街に自ら足を踏み入れる人など
そうそういない。
貴族ともなれば、尚更。
暗黒街というのは確かに存在してはいるが、
そこに訪問したことのある人の少なさからすると、
ほとんど都市伝説のようなものだった。
「何で暗黒街なんや？」
尋ねてきたシャオロンに答える。
『名うてのスリや暗殺者がいるから。
金を貰って、上流階級から仕事を請け負う場合もあるんだって。
エーミールを狙ってる奴もいるかも。』
そう言って、エーミールを手で示す。
突如、自分を指されて驚いたエーミールは、
顔を上げて、不安気な表情を見せた。
隣で頭を押さえながら大先生がボソリと呟く。
「逆に、それ以外の場所で情報集められへんしな。」
「成る程。」
若干納得したような空気が漂うが、
それでもどこか奇妙な緊張感が漂っている。
本当に行くのか？ という疑問を、
それぞれの顔が語っていた。
────行くのか？ じゃないよ。
行くんだよ！！！！
ここで自警団の実績つくんなきゃ
どこで作るんだよ。
『はい。これは決定項です。』
パン、と手を打って視線を集める。
『新団員も入れて、初のお仕事だ。
折角相談してくれたエーミール君の身の安全を守れないと、
自警団の名も名乗れないだろうが。』
「…………そうか？」
『そうなんだよ。』
戸惑いの表情を浮かべるトントンに対して、
ゴリ押しで立ち向かう。
拳を握り締めて、はきはき言い放つ。
こういう場は仕切ったもん勝ちだ。
『しばらくは校内でもエーミール君を護衛しよう。
常に、この中の誰かと行動するようにしてほしい。』
「わ、かりました。」
エーミールは刻々と首を縦に振る。
辿々しい答えと真剣な表情が
彼の実直さを物語っていた。
クッキーに手を伸ばしながら、
オスマンが困ったように笑う。
「…………Aがそこまで言うなら、分かった。
我々自警団の初仕事やな。頑張ろ。」
彼の静かな声が池の上に響く。
────よし、決まった。
私は思わず爽やかな笑みを浮かべた。
エーミールの護衛、敵の追跡。
ざっくりとした初任務。
翌日、グルッペンにシャオロンの入団も含めて端的に報告すると、
彼はビックリしながらも顔を綻ばせていた。
「すっげぇなぁ。」
『すっごいだろ？
これが全部昨日の放課後に起きた。』
「俺も参加しときゃ良かったわ。」
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サツキ(プロフ) - ひいいん😭何度読み返しても素敵な作品です（ ; ; ）のんびり更新待ってます‼️ (10月25日 3時) (
レス) @page40 id: 59b14c1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - めちゃめちゃ好きで先が楽しみです！！更新楽しみに待ってます！ (8月17日 15時) (レス) @page40 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
亜鉛2℃(プロフ) - 更新ありがとうございます。お待ちしておりました。とても面白くて文に厚みがあって素敵です。これからも楽しみに待っております。 (2023年4月5日 15時) (レス) id: 7a92f90d7d (このIDを非表示/違反報告)
ユズ(プロフ) - 更新ありがとうございます〜!!!!!まじでずっと待ってました!!!!これからも頑張ってください!!!鬼面白いです!!!! (2023年3月29日 20時) (レス) @page39 id: 05561d72b4 (このIDを非表示/違反報告)
六時の虹(プロフ) - 更新ありがとうございます！この小説めっちゃ面白いです！ (2023年3月29日 10時) (レス) @page39 id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そね
| 作成日時：2020年6月8日 23時
