開催 ページ12
その後、数日も経たずに私は荷物をまとめて
家族にまたしばしの別れを告げた。
父や兄からは「気をつけろ」と繰り返し
忠告されたが、適当にいなして去った。
冬休みも始まったばかりなのに家を出たのは、
もちろんグルッペンの実家の宿屋に向かうためだ。
街に出て馬車を拾う。
行く先を告げると、運転手はにこやかに頷いた。
私を乗せたまま30分ほどガタガタ揺れて、
すぐに馬車は止まる。
降りた後に料金を手渡しながら、
ここがグルッペンの家か、と宿を見上げた。
────趣のある良い古宿だ。
煉瓦色の屋根が可愛らしい。
さほど大きくはないが、狭くもないだろう。
人の良さそうな老爺の運転手が
「お荷物運びましょうか？」と、
自分の鞄に手を伸ばす。
しかし、私の鞄は細いご老体には重すぎるだろう。
運んでもらうのは申し訳ない。
『ありがとうございます。
でも大丈夫です。自分でやるんで。』
「ですが、これはお嬢さん１人じゃ厳しいんじゃ。」
運転手の彼は、遠慮なさらずに、と
言わんばかりに鞄を手に取ろうとする。
遠慮がちながらも、熱心な気遣いが見える動作だった。
でも、私は鍛えてるから全然大丈夫なんだよな。
どう断ったもんか、と苦笑いを浮かべた。
すると、横からヌッと、
覚えのある大きな影が近づいた。
「お爺さん、大丈夫やで。俺が運ぶ。」
そのまま、大きな革の鞄をヒョイと持ち上げて、
何でもないように肩にかけた。
暗い色で地味ながらも、上等な外套に
身を包んだ彼を見て、私は驚く。
『トントン、もう着いてたのか。』
「さっきな。」
赤いマフラーの舌から、
柔らかく口角が上がっているのが見える。
運転手の爺さんは、安心したように息を吐く。
どうやらトントンのことを宿屋の手伝いだと
思っているようだ。
「そうですか。じゃあ、どうも。」
そう笑って、また馬車を引いて帰って行った。
しかし、トントンが貴族なのだと知っている
私としてはなかなか異常な光景だ。
貴族が荷物持ちなんてしない。普通は絶対。
だが、その横にいる彼は
あっけらかんとした顔で挨拶してきた。
「久しぶり……でもないな。たった数日か。」
『学校居たときは、ずっと会ってたから、
めっちゃ久々な感じだな。
荷物ありがとう。自分で持つよ。』
「別にええよ。
こんくらいならそのまま宿まで持ってくわ。」
『こんくらいって』
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サツキ(プロフ) - ひいいん😭何度読み返しても素敵な作品です（ ; ; ）のんびり更新待ってます‼️ (10月25日 3時) (
レス) @page40 id: 59b14c1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - めちゃめちゃ好きで先が楽しみです！！更新楽しみに待ってます！ (8月17日 15時) (レス) @page40 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
亜鉛2℃(プロフ) - 更新ありがとうございます。お待ちしておりました。とても面白くて文に厚みがあって素敵です。これからも楽しみに待っております。 (2023年4月5日 15時) (レス) id: 7a92f90d7d (このIDを非表示/違反報告)
ユズ(プロフ) - 更新ありがとうございます〜!!!!!まじでずっと待ってました!!!!これからも頑張ってください!!!鬼面白いです!!!! (2023年3月29日 20時) (レス) @page39 id: 05561d72b4 (このIDを非表示/違反報告)
六時の虹(プロフ) - 更新ありがとうございます！この小説めっちゃ面白いです！ (2023年3月29日 10時) (レス) @page39 id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そね
| 作成日時：2020年6月8日 23時
