いざ出陣 ページ7
『……あの酒場に戻りましょうか。
困りましたね。』
ぽかんと固まるエーミール教授に、
声を掛けつつ、運転手に指示する。
馬が嘶き、馬車が来た道をくるりと戻る。
反対車線に移ったところで
やっと我に帰ったように、
教授が目をパチパチ動かした。
「でもあそこはゾムさん達が、
…………いえ、行った方が良さそうですね。」
私も目を合わせて頷く。
確かにあの店はゾム隊が調査する事になっているが、
どうもあの偽物が、堂々と出入りしているのが気になる。
━━━━上手く言えないけれど、不安なのだ。
嫌な予感と言うのだろうか。
それはエーミール教授も同じらしい。
また馬の足音に合わせて車体が揺れ始めると、
教授はこそっと私に耳打ちしてきた。
「さっきの、凄いですね。
軍服の細かい装飾や
布地まで覚えてらっしゃるんですか？」
『たまたまですよ。』
これは本当だ。
覚えようと思って覚えられるものでも無い。
ただ、なんとなく倉庫点検していた時のことを
偶然思い出せただけだ。
しかし、エーミール教授は感心するように、
口元に両手を添えている。
━━━━また、何か誤解されているかもしてない。
教授はまたしても、乳白色の瞳を
少年のように輝かせている。
…………エーミール教授のこういう所は、
ちょっとゾム隊長とも似ているな、と思う。
見た目に似合わない、子供っぽい言動や仕草を見せる所だ。
彼等が“四流“という名でバディを組んでいるのは、
そういう所で気が合うからかもしれない。
頬を掻きながら、彼の熱い視線を避けた。
期待されるのは嬉しい、だけども気恥ずかしい。
すると、其処で馬車の揺れが止まった。
数m先に、例の酒場が見える。
敵の根城らしき場所だ。
━━━━何だか緊張してきた。
ドクドクと鼓動が荒ぶるのを感じながら、
馬車を降りる。
『行きましょうか。』
「行きましょう。」
エーミール教授は相変わらず、
好奇心が抑えられないという顔だ。
━━━━怖がってるのは私だけか？
拍子抜けしながらも、
運転手に料金を渡し、
敵の居るであろう場所へ向かう。
絶対に怯まないように、
私は背筋を伸ばして、足を踏み出した。
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ユズリハ(プロフ) - はじめまして、深夜にコメント失礼します。「段階を踏め｣のkn氏の「あのd/先/生は、10代の頃のd/先/生なんやな｣というセリフが本当に素敵で、読んだ後しばらくセリフを反芻してしまいました。u/先/生の気持ちを想像して本当に素敵な文章だと感じました。応援してます (2021年3月15日 4時) (
レス) id: 4ab6b4c8e6 (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - どらこさん» コメントありがとうございます。日課だなんて恐れ多い位嬉しいです。どらこさんもお身体にお気をつけて下さい。 (2020年5月4日 20時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
どらこ - 毎日そねさんの作品を見るのが日課になっています！素敵な作品をありがとうございます、お体にはお気をつけて！ (2020年5月3日 19時) (レス) id: f300ebe4ea (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - しおりんさん» 前作からコメントありがとうございます。勝負の結果は最後まで悩んでいたのですが、お褒め頂いて嬉しいです。コロシアム良いですよね。 (2020年5月3日 18時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん - (敬語出来てるかな？タメ口になりそうだな〜語彙力溶けてそう､､いや溶けた) (2020年5月2日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そね
| 作成日時：2020年4月26日 0時
