間もなく ページ46
「どうだ。」
『美味しいです。
とても、他にゆで卵しか作れない人だとは思えません。』
「炒り卵も作れるぞ。」
────誤差の範囲だな、と思った。
宣言通り、数十分後に
ミルク粥の入った器が出てきた。
牛乳と、バターとコンソメの匂いが心地よい。
匙で粥を掬って喉に流すと、
暖かな粥の素朴な味が広がった。
これは美味しい。
『おかわりありますか？』
「食べ終わってから訊けよ。」
『もう食べ終わりますよ。』
匙で、器のふちに付いたお粥を削ぎながら答える。
美味しい、美味しいと言って粥を口に運び続けた。
スパルタクス少佐は、
少し気恥ずかしそうに顔を背けて、
粥の残りが入った鍋を運んできた。
どうやら、私の喜びようは予想以上だったようだ。
「…………前の実戦訓練の反響はどうだ。」
『急に話替わりましたね。』
スパルタクス少佐が、
話を逸らすように粥をよそう。
『なかなか各方面からお褒め頂きました。
コネシマ隊の方も挨拶に来ましたよ。』
「そうか、良かった。
これでお前の実力を疑う奴はいないな。」
彼は何故か満足そうに、胸を張って笑う。
────さっきから、何でスパルタクス少佐がドヤ顔を浮かべているんだろう。
粥のおかわりを食みながら、
私は、適当に相槌を打つ。
『そうですか。』
「また戦争も近づいているからな。
仲間内でいざこざを抱えている場合ではない。」
『……そうですね。』
××国領土の北に位置し、
新たな敵国となりうるβ共和国との戦争の話をしているのだろう。
『あの国は、前々から我々国を嫌っていますからね。』
「そうだな。
何をしなくとも、向こうから火種を作るだろう。」
“平和主義”を掲げるβ国にとって、
戦争国家の我々国は目の敵でしかない。
何かしらの理由を付けて、
間もなく開戦するはずだ。
────仕事が増えるな。
柔らかい粥を匙で混ぜた。
湯気が立ち、また優しい乳製品の香りが昇る。
「前から訊きたかったんだが。」
『何ですか。』
「お前は戦争が好きか？」
スパルタクス少佐は、頬杖をつきながら尋ねた。
何かを試しているような表情ではなく、
素直に疑問に感じているようだ。
『何とも思ってないですね。
ただ目標のために必要な手段として、
戦争があるだけです。』
「そうか。」
私はお粥の最後の一口を丁寧に味わった。
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ユズリハ(プロフ) - はじめまして、深夜にコメント失礼します。「段階を踏め｣のkn氏の「あのd/先/生は、10代の頃のd/先/生なんやな｣というセリフが本当に素敵で、読んだ後しばらくセリフを反芻してしまいました。u/先/生の気持ちを想像して本当に素敵な文章だと感じました。応援してます (2021年3月15日 4時) (
レス) id: 4ab6b4c8e6 (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - どらこさん» コメントありがとうございます。日課だなんて恐れ多い位嬉しいです。どらこさんもお身体にお気をつけて下さい。 (2020年5月4日 20時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
どらこ - 毎日そねさんの作品を見るのが日課になっています！素敵な作品をありがとうございます、お体にはお気をつけて！ (2020年5月3日 19時) (レス) id: f300ebe4ea (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - しおりんさん» 前作からコメントありがとうございます。勝負の結果は最後まで悩んでいたのですが、お褒め頂いて嬉しいです。コロシアム良いですよね。 (2020年5月3日 18時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん - (敬語出来てるかな？タメ口になりそうだな〜語彙力溶けてそう､､いや溶けた) (2020年5月2日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そね
| 作成日時：2020年4月26日 0時
