男の謎 ページ5
『…………教授。』
「…………」
私はエーミール教授の目を、訝しく睨む。
彼は目を逸らして、モジモジと手を遊ばせている。
その様子をパウル中尉は冷めた目で見つめていた。
『エーミール教授、
観光客を特定する、という話はどうなったのですか。』
「ははは…………」
「やはり、本部要塞にお帰りになった方が。」
ガタガタと馬車が揺れた。
私逹は例のように、馬車で移動しているのだ。
『エーミール教授の助言は、
我々が兵站計画を立てる上で、大変参考になりました。
感謝してもしきれません。
しかしながら、
そのためだけに幹部を連れ回す事もできません。
スパイを探し当てるという条件で、
教授は此処にいらっしゃるのですよね。』
「…………それはそれで、着々と進めていますよ。
チーノさんとね。」
エーミール教授は、
相変わらずの苦笑いを浮かべる。
疑わしい私は唇を歪める。
────本当か？
チーノ隊長は、
沿岸の物資集積所に残って倉庫の武器をいじったり、
兵士を連れて飲みに行っている印象しかない。
────調査らしい調査をしてない…………
頭を抱える私を、
エーミール教授は慌ててなだめる。
「本当！ 本当なんです。
あと2、3日もすれば…………」
「エーミール教授、それは3日前も仰っていましたよ。」
パウル中尉が、鋭く言葉を遮る。
彼も私も、教授にだいぶ慣れてきた。
この人は、確かに頭脳派だが、大人げない。
また、追い詰められた子供のように、
教授は丸く縮こまっている。
「…………でも、私も私なりに
色々考えているんです。少し聞いてください。」
ちょっとだけ、
教授の声が落ち着いた声色に変わる。
「まず、ゾムさんから聞いた話、
おかしいと思うんですよ。
どうして、スパイの男はわざわざ我々軍の軍服を着ていたのでしょうか。
自分が我々国の者だとアピールしているように感じます。」
『…………それは、ありますね。』
確かに、不自然だ。
スパイの男はそれ程に急いでいたのだろうか、
と勝手に思い込んでいたが、
それにしても、コートか何か着るだろう。
「だから、私は我々軍の中にスパイがいるのではなく、
何者かが我々軍人を装って
行動しているのではないか、と考えています。」
「成程。
しかし、そうすると理由が解りませんね。」
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ユズリハ(プロフ) - はじめまして、深夜にコメント失礼します。「段階を踏め｣のkn氏の「あのd/先/生は、10代の頃のd/先/生なんやな｣というセリフが本当に素敵で、読んだ後しばらくセリフを反芻してしまいました。u/先/生の気持ちを想像して本当に素敵な文章だと感じました。応援してます (2021年3月15日 4時) (
レス) id: 4ab6b4c8e6 (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - どらこさん» コメントありがとうございます。日課だなんて恐れ多い位嬉しいです。どらこさんもお身体にお気をつけて下さい。 (2020年5月4日 20時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
どらこ - 毎日そねさんの作品を見るのが日課になっています！素敵な作品をありがとうございます、お体にはお気をつけて！ (2020年5月3日 19時) (レス) id: f300ebe4ea (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - しおりんさん» 前作からコメントありがとうございます。勝負の結果は最後まで悩んでいたのですが、お褒め頂いて嬉しいです。コロシアム良いですよね。 (2020年5月3日 18時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん - (敬語出来てるかな？タメ口になりそうだな〜語彙力溶けてそう､､いや溶けた) (2020年5月2日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そね
| 作成日時：2020年4月26日 0時
