彼の心彼女知らず ページ19
『────って感じだったんだけど。』
「何を澄ました顔で語っとんねん…………」
悲痛な声が響く。
思い出話を終えた時には、
鬱先生は、正面からガッシリと
私の両肩を掴み、うなだれていた。
「何やっとんのトントン…………
そして、何で爆弾なんや。
何でエーミールも止めへんねん…………
何でお前も逃げへんねん…………」
『だって。』
「だっても糞もあるか！
お前このままやったら、死ぬぞ!?
普通の出張で終わると思って、
油断してた僕が馬鹿やったわ。
もおお…………過保護にもなるわこんなん。」
鬱先生は顔を上げて、声を荒げる。
額に汗が浮かんでいて、珍しく動転していた。
────あーまた叱られてる…………
あまりの形相に言葉に詰まる。
すると、彼は追撃をかけるように、
私の頬をにゅっと抓った。
鬱先生の骨ばった手が、遠慮なく肌を引っ張る。
『何？』
「うるさい。
僕怒ってんねんぞ。」
怒っていても頬をつねる程度で済ます辺り、
やっぱり鬱先生は私の事を子供だと思っている。
頬は全く痛くないけど、
彼は至って真剣な顔付きだ。
「グルちゃんにゴチャゴチャ言われるやろうけど、
流石にこれは口出しするわ。
Aお前暫く要塞から出るの止めろ！
お前を外で働かすと危ない！」
『ええ……』
捻られた頬をさすりながら、
鬱先生の吊り上がった瞳を見やる。
「反対しても無駄やぞ。
もうこれは、幹部権限でも何でも使うからな！」
『大人気ない。』
「大体、お前がちゃんと自分の身を守ってたら、こんな事せえへんねん。
暫く、出張は無し！
要塞でデスクワークしながら反省しなさい！」
────反省しなさい！ って、
また子供扱いしてるな。
言い分からしたら、
鬱先生の方が駄々っ子のようだと思うけど。
だって私軍人なんだから、
危険な場に立ち合っても仕方ないじゃんか、
と抗議しようかとも考えたが。
「ええな!?
絶対やぞ！」
『はいはい。』
それでも彼の剣幕には耐えられなさそうなので、
私はそそくさと退散する事にした。
眉間を抑えて、
まだ何か言いたそうな鬱先生を残し、
『じゃあ、失礼しました。』
と、去り際に言い捨てて扉から脱出する。
あーもう。
大人が駄々をこねる時ほど厄介な事はない。
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ユズリハ(プロフ) - はじめまして、深夜にコメント失礼します。「段階を踏め｣のkn氏の「あのd/先/生は、10代の頃のd/先/生なんやな｣というセリフが本当に素敵で、読んだ後しばらくセリフを反芻してしまいました。u/先/生の気持ちを想像して本当に素敵な文章だと感じました。応援してます (2021年3月15日 4時) (
レス) id: 4ab6b4c8e6 (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - どらこさん» コメントありがとうございます。日課だなんて恐れ多い位嬉しいです。どらこさんもお身体にお気をつけて下さい。 (2020年5月4日 20時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
どらこ - 毎日そねさんの作品を見るのが日課になっています！素敵な作品をありがとうございます、お体にはお気をつけて！ (2020年5月3日 19時) (レス) id: f300ebe4ea (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - しおりんさん» 前作からコメントありがとうございます。勝負の結果は最後まで悩んでいたのですが、お褒め頂いて嬉しいです。コロシアム良いですよね。 (2020年5月3日 18時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん - (敬語出来てるかな？タメ口になりそうだな〜語彙力溶けてそう､､いや溶けた) (2020年5月2日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そね
| 作成日時：2020年4月26日 0時
