眠りにつくまで ページ17
翌日21時。
タクシー車内。
「A様は……どうして
どうして自分のいない所で
いつも危険に晒されるのですか…………？」
『ごめんて。
でも仕方ないだろう。
爆弾あるの知らなかったんだから。』
「教授と一緒にお逃げになってくださいよ！
もう、私があの場を離れなければ……」
私は、号泣するパウル中尉と共に帰国していた。
彼は先程から、私の肩を揺さぶりつつ
おいおいと泣き続けている。
正直ちょっと鬱陶しいけれど、
止めても聞かないのでもう放っているのだ。
『でも良いじゃないか。
お前が偽軍服野郎を捕まえたお陰で、
独立推進派組織の連中を拘束できたんだろう？
パウル中尉のお手柄だぞ。』
ある兵士が言うには、
パウル中尉が我々軍の偽物を捕獲した後、
チーノ隊長が彼を尋問した事で、
組織の面子やアジトの場所などを聞き出したらしい。
これにより、
独立推進派組織は全滅状態。
パウル中尉は敵組織壊滅に一役買ったのだ。
我が部下ながら、素晴らしい。天晴れだ。
優秀やな本当に。よすよす。
「あれだって、
A様の指揮のお陰じゃないですか!?」
『自分は指揮しただけだし、
私が追い掛けても無駄骨だった。
あれはお前だったからできたんだ。』
流石だな、と言って中尉の背中をポンポン叩く。
パウル中尉は、
また嗚咽を漏らして泣き出してしまった。
────運転手が心配そうに見てる…………
大丈夫です、とさりげなく会釈しながら、
私は中尉を宥める。
────トントン書記長から
敵組織を炙り出すように仰せつけられたのは私だが、
今回活躍したのは私ではなく、
エーミール教授、チーノ隊長、ゾム隊、パウル中尉や他の兵士達だ。
書記長の期待に応えられず申し訳無いが、
この事は正直に報告しよう。
幹部の方々は、
本部からやって来た陸軍小隊の護衛と共に帰国していったし、
他の兵士達は基地建設を始めるために
××国領内に残るのだそうだ。
治安は今より大分マシになるだろうから、
きっと円滑に進むだろう。
私も報告書を纏めなくちゃいけない
暗い夜道を眺めながら、
ぼんやりと隣のパウル中尉の背中を叩く。
何だか疲労が滲んできた。
ポケットの中の端末が震えているが、
手に取ろうにも力が入らない。
『…………』
だんだん重くなっていく瞼に耐えられず、
私は目を閉じた。
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ユズリハ(プロフ) - はじめまして、深夜にコメント失礼します。「段階を踏め｣のkn氏の「あのd/先/生は、10代の頃のd/先/生なんやな｣というセリフが本当に素敵で、読んだ後しばらくセリフを反芻してしまいました。u/先/生の気持ちを想像して本当に素敵な文章だと感じました。応援してます (2021年3月15日 4時) (
レス) id: 4ab6b4c8e6 (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - どらこさん» コメントありがとうございます。日課だなんて恐れ多い位嬉しいです。どらこさんもお身体にお気をつけて下さい。 (2020年5月4日 20時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
どらこ - 毎日そねさんの作品を見るのが日課になっています！素敵な作品をありがとうございます、お体にはお気をつけて！ (2020年5月3日 19時) (レス) id: f300ebe4ea (このIDを非表示/違反報告)
そね(プロフ) - しおりんさん» 前作からコメントありがとうございます。勝負の結果は最後まで悩んでいたのですが、お褒め頂いて嬉しいです。コロシアム良いですよね。 (2020年5月3日 18時) (レス) id: a65daacb18 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん - (敬語出来てるかな？タメ口になりそうだな〜語彙力溶けてそう､､いや溶けた) (2020年5月2日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そね
| 作成日時：2020年4月26日 0時
