君の季節〈ハル〉 (ページ3)

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『嫌ですよ合コンなんて！！』

「頼むって！結城くらい可愛い子じゃないとダメなんだって！」

『褒めても何も出ません！嫌ですってば！』

嬉しい、ちょっと嬉しい。

...いや嘘ついたかなり嬉しかった。

この会社に入って2回目の春がきた。

1年前、入社したてで営業部に配属され

右も左もわからなかった頃、教育係として

付いてくれたのがこの木村課長。

仕事はできる、一般的に見てかっこいいと思うし

すごく気さくで人望も厚い入社7年目。

そこまで大きくない会社っていうこともあるけど、

7年で課長は異例のスピード出世。

野球が好きっていう共通の趣味ですごく仲良く

してもらえて、何回かご飯に行ったりもした。

普通なら、普通なら好きになる流れ。

でもごめんなさい、私には限りなく恋に近い

憧れの存在がいるんです。

「あーあ、来てくれたらバックネット裏のチケットあげようと思ったんだけどなー？？しょうがないか」

『待ってください、』

「お、釣れた釣れた」

課長がわざとらしくひらひらさせたのは紛れもなく

開幕戦のバックネット裏のチケット。

どうしてもお前を連れて行きたくて必死になって取ったんだぞ、なんて言われましても。

でも死ぬほど行きたい。

開幕戦バックネット裏なんてこのチャンスを逃したら

もう2度と手に入らないかもしれない。

『わかりました、行きましょう！！』

「今週の金曜だから、開けとけよ。合コンが終わったらチケットは渡そう。」

待ってましたとばかりにそう言ってニヤニヤしてる課長が憎い。

でもチケットはありがとう。

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