Sugar blood (ページ6)

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家に帰るとガシャン！！て大きな音が響いたから、また勝手に所有者になったとかいう輩が来たのかと思った。人の家好き勝手壊しやがって。

音のした部屋に向かう途中、ふわりと甘い香りがした。足を進める度にどんどん強くなって、歩くのをやめていつの間にか走っていた。

「……まさか、」

この、甘くてひどく俺を誘うような。どうしようもないくらい喉が渇いて欲しくて欲しくて堪らなくなるような香りは。たまに学校でするのと同じで、俺がずっと探していた香りそのもの。

扉の前でなんとか落ち着かせてゆっくりと開けると、テーブルの上に女が片脚突っ込んで寝そべってた。

「……は？」
『……え？』

どういう状況？と冷静に情報を集めようとする脳と、開けたことで一層強くなったその誘惑のせいでくらりする頭と。…あぁやばい。こんなの理性なんか一割程しか残ってない。逆にそれで耐えてる俺天才。

めちゃくちゃに噛み付きたい気持ちを抑えて近付くと、折れたシャンデリアとか首に掛かってるロープとか、無惨に転がってる椅子とか。この子がなんのためにここに来たのかをなんとなく察した。

「あのさ。ここ俺の家なんだよ。勝手に人の家で死のうとしないで。」
『…ごめんなさい、』

ほんとに。俺の家じゃなくても死なれたら困るんだけど。だってやっと見付けたんだよ。数百年生きてきて、初めて。こんなに本能が揺さぶられるとかあり得ない。しかもすげー俺好みの容姿で、気持ち弱ってて、今ぼろ泣きで？舐めてんのか。血だけじゃなくてこいつ自身も悪い。吸血鬼の本能がなくても普通に勃つ。食堂のテーブルに寝そべるとか食べてくださいって言ってるようなもの。

「…脚、怪我してるっぽいから。」

でもすぐにがっつけばこいつは確実に俺を恐がるし、一回で死ぬまで吸い続けて終わりとかもったいなさすぎて出来ない。

紳士ぶって手当てしながら話を聞いてると、襲わずに踏みとどまってよかったと思った。こいつのこといじめる奴らと同じに思われるのは勘弁。ただやりたいだけじゃないんだよ。ここでお前のこと逃がしたら、多分俺後悔どころじゃ済まなくなる。だから優しく、優しくして、警戒を下げるように努めるんだ。

「……名前は？」

少しでも情報が欲しくて聞くと、目が完全に合う前に逸らされた。下向いて、自信無さそうに小さな声でぼそぼそと答える。それがすげーイラついた。