Sugar blood (ページ12)

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『いってきます。』
「ん。いってらっしゃい。」

一緒に行こうかって言われたけど、こんなかっこいい先輩といれば目立つに決まってる。それに私なんかが先輩の側にいるのは不釣り合い過ぎるから、丁重にお断りした。

「あ、待ってA。」
『？はい、……！』

頭を引き寄せられるからキスするのかなと思ったら、先輩の顔は下にいった。首にチクリとした痛みが走って、今までの食事で痛みなんて感じたことが無かったからびっくりした。

『…え、なんですか、』
「男避け。あとそのだっさい格好どうにかしろ。いじめられたくなかったら堂々としてればいいんだよ。」

そう言って髪を束ねるゴムもメガネも外されて、これでも塗っとけって渡されたのはスカーレット色のルージュ。

「…それ俺の母親の。まだ使ってないみたいだから。」
『そんな大事なもの、いいんですか？』
「いいよ。」

こんな強い赤を付けることなんてなかったから、なんかもう顔の造形が無くなって唇の色しか認識出来ないんじゃないかと思った。あだ名オカメとかにならないかな…

『…どう、ですかね？』
「……付けすぎ。」
『え。……っ、』

恥ずかしいと思ってすぐに拭き取ろうとすると、先輩の唇が軽く触れた。

「…嘘。キスしたかっただけ。」
『……心臓に悪いです…』
「だってお前すげー綺麗だから。」
『………』

なんなんでしょう、この先輩という男は。私のことを殺すつもりなのでしょうか。こんな茹でダコみたいに赤い顔で学校なんて行けないよ。あぁ行かせたくねぇなって抱き締められたせいでルージュが先輩のシャツに付いてしまった。

『すみませ、』
「…あー、気にするな。」

ほらもう時間だろって背中を押される。頑張れってふっと優しく微笑んだ先輩にきゅんとして、ひどく憂鬱だった学校も頑張ろうと思える。

『行ってきます、先輩。』
「おー。行ってこい。」