Sugar blood (ページ2)

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自分からこの状況を変える勇気がないから、私はこうするんだ。これは自由のためのもの。今から私は楽になるんだ。そう思うと気持ちが逸って、早く楽になりたくて。

『…っ』

思い切り椅子を蹴った。

苦しい。けど、こんな苦しみよりもっと辛くて痛いことなんていっぱいあった。呼吸が出来ない。あと少し。あと少しで私は──…

──ガシャン！！

『……っ、…なんで…』

…楽になれなかった。

シャンデリアの老朽化が進んでいたようで、引っ掛けた部分がボキリと折れていた。その上落ちた衝撃で左脚だけが木のテーブルを突き抜け、抜けなくなってしまった。

『…なんでよ…っ…なんで死なせてくれないの…』

死んだ方がまだマシになれるのに。

神はいないと思った。どれだけ泣いて懇願しても救われないと分かったから自分で後始末をするつもりだったのに。この地獄みたいな世界でまだ生きろと言うのか。この呪われた家でさえ、私は死ぬことも出来ないのか。

『……』

…なんかもう、どうでもよくなった。

抜け出そうと体を動かすことも無駄に思えて、後ろに倒れた。テーブルに片脚突っ込んで寝そべるってどんな状況なんだろう。変に笑いが込み上げてきて、ひとしきり笑っていたらこめかみを伝っていた涙が乾いてきた。

そこから急激な眠気が襲ってきた時。

「……は？」
『……え？』

不意に、ガチャリと扉が開いた。

扉が開いた…？

『あっ、え、…だれ、』
「…お前こそ誰。」

入ってきたのは私と同じ制服を着た男の人で、どこかで見たことがあるような顔だった。不機嫌そうな表情のその人は雪みたいに白い。黒い髪と薄く赤い唇がよりその白さを引き立てて、とても美しい人だと思った。

ていうか人住んでたの？しかも同じ学校の人とか。なんでよりによってこんな恥ずかしくて確実にやばい状況で会うんだろう。

「…お前何やってんの。」
『あ、脚が抜けなくなってしまって…』
「テーブルで？」
『……はい。』

ちらりと周りを見ると、あぁ、て察した顔した。それからめんどくせぇと呟いてテーブルに近付いてきた。

「あのさ。ここ俺の家なんだよ。勝手に人の家で死のうとしないで。」
『…ごめんなさい、』
「……あぁ泣くなって。」
『ご、ごめんなさ、』

これまでも最悪だったけど、死のうとした時にまで人様に迷惑を掛けて何やってんだろうって思った。だけど申し訳なさ過ぎて勝手に出てくる涙を、その人は困ったように優しく拭いてくれた。