僕らの世界が終わる頃 -The finale of our world ｰ (ページ5)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:194 hit

第4話　絆ページ5

詩織「レイ？」

突然立ち止まったレイを、詩織は不思議に思って振り返った。

レイ「ねぇ…笑わないって、約束してくれる？」

レイはその面立ちを、いつになく曇らせて詩織に言った。普段は気丈な彼女がこんな風に心細い表情を見せるのは初めてだなと思いながら、詩織は黙ってうなずいた。
レイが俯き、硬い口調でつぶやく。

レイ「私、あの子が殺されているのを発見してからずっと、誰かに見られている気がする。誰かが近
　くで私たちのことを見張ってて、私のことも、詩織やさくらやみんなの事も捕まえに来るんじ
　ゃないかって不安になるんだ。みんなが目の前から消えちゃうんじゃないかって、すごく怖く
　なるの。………変でしょ？こんなことあるはずないのにね。私、おかしな事言ってる。」

泣き笑いのようにつぶやくレイに向かって、詩織は「ううん。」と首を振った。

詩織「笑わない師、誰もいなくならないわ。」

歩み寄り、詩織は不安に立ち尽くす親友の肩をそっと抱きしめた。まるで、何かの効力を持つ誓いのように、厳かな口調でレイに囁く。

詩織「約束する。もしも恐ろしい何かが目の前に現れても、私はレイを見捨てて逃げたりしないわ。
　だってレイは、私の大切な友達だもの。」

詩織は、凛とした声でもう一度口にした。

詩織「絶対逃げない。……………絶対、守るから。」

………その時、抱き合う彼女達の影で、奇妙な影がじっと見ているのを、気づく者は誰もいなかった。