第四十六話 ページ46
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目を覚ましたのはいつもの時間だった。
夜営業の飲食店だから大体10時とか、遅くても10時半とか。
今から身支度を済ませて、職場に行って、仕込みをして、お昼のまかないを食べて、そこから23時まで働くのが私の生活。
2年以上前からそこに、宮侑君という現在私の彼氏が迎えに来てくれるようになった。
1度も欠かさずに、お風呂上がりの少し湿った髪と、ジャージ姿で会いにきてくれた。
それももう次は無い。
今日、私は侑君と別れるんだ。
スマホを開くと侑君からメッセージ。
�爐�はよう‼ 今日仕事休みやしゆっくり疲れとりや〜��
こうやって侑君からメッセージが送られてくるのも、きっと今日で最後だろう。
連絡がマメな彼は時間に余裕ができればすぐに返信をしくれる人だった。
「いただきます」
いつもなら食パン1枚で終わらせる朝ごはんを、今日はそこにベーコンと目玉焼き、インスタントのスープも付けた。
朝からこんなに食べるなんて慣れない事をしたから胃がびっくりして、ちょっと後悔した。
侑君に会うまであと9時間程。
部屋中を掃除して、スーパーに買い物に行って、溜め込んでいた録画を見てたりしたら、あっという間に20時を過ぎた。
そろそろ出ないと。
ため息をつきそうになった瞬間慌てて息を吸い込んだ。
どの立場でため息なんかつこうとしてるんだ。
もう覚悟は出来ている。
大きな深呼吸を1つ。そして私は待ち合わせ場所の駅へ向かった。
「おーAちゃん‼」
「お疲れ侑君」
いつも通りの無邪気で優しい笑顔で私を呼ぶ侑君。
とりあえずどこかカフェでも入ろうかと提案したけど、「缶コーヒーでよかったらさっき自販機で買ってきてん」と言われた。
「それで話って⁇」
「えっと…」
駅から移動して公園のベンチに座る。
言え。ここまで来てやっぱり言えませんでしたなんてあってたまるか。
逃げるな。
「私と、別れて欲し…い」
自分の口から告げた「終わりの言葉」は震えていた。
ちゃんと侑君の目を見て言うべきなのに、怖くてどうしようもなかった私は俯きながら言ってしまった。
「………そおか、」
暫くして小さく呟いた侑君の声は弱々しいものだった。
ごめんなさい。
今から話す私の話を、どうか許さないでください。
「気付いてしもたんやなあ」
頭の中にハテナが浮かぶ。
なんの事⁇ってゆっくりと侑君の方を向けば、薄く笑っている。
「臣君の事まだ好きって事」
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作者名：林檎 | 作成日時：2020年6月19日 16時
